韓国メディアが「慰安婦が軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられた証拠はない。あるなら韓国にも出してもらいたい」という橋下市長の発言に「妄言」と反発しているが、これは橋下氏が100%正しい。この問題がこじれる一つの原因は、次の3つの問題が混同されることにある。
  • 軍が慰安所の経営に関与したのか
  • 軍が慰安婦を強制連行したのか
  • 慰安婦の労働実態が悲惨な性奴隷だったのか
まず軍が慰安所の経営に関与していたことは周知の事実で、日本政府も否定していない。Wikipediaにも多くの事例が集められているように、どこの国でも兵士の性処理を軍が管理していた。危険な戦地で、軍が関与しないでビジネスを行なうことは不可能だ。1991年に私が取材したときも、慰安婦を含む朝鮮人労働者を日本軍の船で運搬したことを示す文書が札幌の公文書館で見つかった。

ところが朝日新聞が「関与」を「強制連行」と混同して報道したため、福島瑞穂氏などの弁護団は「キーセンに売られた」という元慰安婦の証言を「兵士に強制連行された」と書き換えた。当然それを裏づける証拠は出てこないので、彼らの主張は後退して「軍による強制はなかったが、業者による広義の強制があった」という話にすり替わった。しかし法廷で出てきたのは、元慰安婦の「無理やり連れて行かれた」という話だけだ。原告の証言だけで被告を有罪にできないことはいうまでもない(裁判はすべて原告敗訴)。

日本政府の調査でも、強制連行の証拠は出てこなかったが、外務省は河野談話で「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた」という曖昧な表現で政治決着をはかった。この「本人たちの意思に反して集めた」主語は誰だろうか。軍が慰安婦を集めた事実はないので、それは慰安所経営者だ。これを「性奴隷」と呼ぶなら、奴隷にしたのは業者であって国ではない。実は、これは吉見義明氏などの左翼も認めていることで、事実認識は秦郁彦氏とほとんど差がない。

これをアムネスティやNYタイムズなどの欧米メディアは「女性の人権侵害」と取り違え、「戦時性暴力」を指弾するが、これは逆である。日本軍が慰安所を管理したのは、兵士が女性を強姦して民間人を敵に回さないことが目的だったのだ。小野田寛郎氏が当時の様子を証言している。


慰安婦の多くが朝鮮人だったと思われるが、これは応募が多かったからだ。当時の朝鮮は貧しく、月収300円(今の150万円)以上も収入がある慰安婦は魅力的な職業だった(当時の二等兵の月給は7円50銭)。売れっ子の場合は終戦のとき2万6000円(現在の1億3000万円)も貯金をしていた。戦後おこなわれた米軍の調査は、慰安婦の生活を次のように記述している。
彼女らはほしいものを買えるだけの多くのお金を持っており、暮らしぶりは良好であった。彼女らは、服、靴、タバコを買えたし、実家から慰問袋を受け取った多くの軍人からの多くのプレゼントで化粧品をまかなえた。将兵と共に、スポーツ、ピクニック、娯楽、社交ディナー等を楽しんだ。蓄音機も持っており、買い物に行くことも許された。接客を断る自由もあり、軍人が泥酔していた時には断ることもしばしばあった。
要するに慰安婦の労働実態は「性奴隷」とはいえないもので、戦後60年以上たって政府間で交渉すべき事案ではない。問題があるとすれば、日本軍が韓国女性を暴力で連行した事実が判明した場合だけだから、橋下氏もいうように、まず韓国政府が「強制連行」の物的証拠を出すべきだ。話はそれからである。