河野太郎氏がブログで、「震災がれきQ&A」を書いている:
Q セシウムによる内部被曝と飛行機に乗った時の外部被曝を比べることに意味がありますか。

同じ放射線量を被曝したら、内部被曝も外部被曝も健康への被害は同じです。3300ベクレル/kgのセシウムを含む食べ物を1kg食べた場合の健康への害[43μSv]は、飛行機で東京-ニューヨークを往復した時の健康への影響[200μSv]よりも少ないことを表します。

Q セシウム137の半減期は30年なので食べたら体内に残り続けるのではないですか。

A セシウム137は尿と一緒に排出され、乳児は9日、大人でも3ヶ月で体内の量が半分になります。セシウムは身体の中に溜まることはありません。
「内部被曝の影響は長期にわたって体内で蓄積するので恐ろしい」という都市伝説がいまだに広くあるようだが、河野氏もいうように内部被曝の預託実効線量はセシウムが体内にとどまる時間や半減期を考慮した累積値なので、外部被曝も内部被曝も同じだ。Svという単位は核種や放射線の種類と無関係なので、「内部被曝ではアルファ線やベータ線もあるので恐い」という話はナンセンスである。

実は「預託線量」に意味があるかどうかも、科学的には疑わしい。以前の記事でも書いたように、放射線の影響が疫学的に正確にわかっているのは広島・長崎の瞬間的被曝に限られ、これは低線量を長期にわたって被曝したときの影響とは違うからだ。ある線量を一挙に浴びるより、1年間で浴びるほうが影響は小さい。

累積的被曝のデータでは、放射線の健康被害はほとんど検出できない。世界には自然放射線が年間数十~数百mSvと高い地域があるが、そこで行なわれた大規模な疫学調査でも癌死亡率に有意な差は見られず、むしろ高線量地域のほうが死亡率が低い。17万人以上の放射線技師についての調査では、技師の癌死亡率は普通の人の81~84%で、健康労働者効果がみられると報告している。

一つだけ、累積的被曝の影響がみられるデータがある。これは放射性ラジウムを発光塗料に使う時計職人の調査で、累積の被曝線量が10Svを超えた191人のうち骨肉腫を発症した人が46人いたが、10Sv以下では1人もいなかった。これは文字盤を塗装するとき、筆の先をなめたことによる内部被曝だと思われる。

こうしたデータをもとに考えると、累積的被曝による影響の閾値は10Sv程度であり、これは瞬間的被曝で統計的に有意な影響の出る100mSvよりはるかに高い。したがってアリソン教授もいうように、累積線量の基準は現在(1mSv)の1000倍ぐらいに緩和しても十分な安全率があるのだ。