t_TKY201201270563けさの朝日新聞が紹介している医学論文によれば、日本人の死因の第1位は喫煙で、2007年には12万9000人にのぼる。第2位は高血圧で第3位は運動不足だが、喫煙は他人にも害を及ぼす点で悪質だ。しかも高血圧による死者は最近、減少傾向だが、喫煙による死者は増えている。

ところが日本のタバコの価格は、先進国の中でアメリカと並んで最低だ。この財政難の中でも、タバコ増税案は民主党の反対で撤回された。これは葉タバコ農家の圧力ということになっているが、タバコ農家の数は約2万戸。最大の圧力団体は、明らかにJTである。

JTは財務省からの天下りの指定席で、理事にOBが3人いる。涌井洋治会長は元主計局長、武田宗高副社長は元内閣府大蔵官房審議官、立石久雄監査役は元国税局長である。世界的にみても、政府がタバコ会社の株式をもっている例はない。欧米では公共空間の禁煙は徹底しており、日本のように居酒屋で煙が立ちこめるという光景は見られない。

国立がん研究センターによれば、タバコの煙には約60種類の発癌物質が含まれている。その影響を受けるのは呼吸器だけではなく、発癌物質は血流に乗って運ばれ、あらゆる臓器に影響が及ぶ。そのメカニズムは化学物質がDNAを傷つけて変異を起こすもので、放射線と変わらない。放射線の影響は1回きりだが、タバコの煙に含まれる有害物質はずっと呼吸器に残るので影響は蓄積し、閾値はない。

多くの専門家が指摘するように、福島第一原発事故による発癌率の上昇は考えられないが、タバコによる死者は確実に年間10万人を超える。問題は放射能そのものではなく健康被害だから、圧倒的に有害でコントロール可能な喫煙を減らすことがもっとも合理的である。「喫煙のリスクは自己責任だ」とタバコ利権の関係者はいうが、受動喫煙のリスクは100mSv以下の放射線より大きい。無意味な除染に何兆円も費やすより、公共空間の禁煙を法律で定めるべきだ。