今年は日本にとって最悪の年だったが、世界経済にとってもひどい年だった。ロゴフはこれを振り返って「現代の資本主義は維持可能か?」と問い、その5つの欠陥をあげている:
  1. 環境などの公共財に適切な価格をつけることができない
  2. 所得分配の不平等をもたらす
  3. 医療のような情報の非対称性の大きいサービスを適切に供給できない
  4. まだ生まれていない世代の福祉を非常に過小評価する
  5. 金融システムをうまく制御できない
このうち日本にとって重要な問題は4だろう。補正を含めると100兆円をはるかに超える国家予算は、バラマキ福祉のコストを発言できない将来世代に負担させる。それによって民主党は票を買うことができ、将来世代がそれを負担するときは政治家はこの世にいない。彼らは将来財の価格がつけられないという市場の失敗を利用して、合理的に行動しているのだ。

この構造は、放射能のリスクゼロを求める福島みずほ症候群と同じだ。安全のコストが無料なら、リスクはゼロがいいに決まっているが、除染には数兆円のコストがかかる。そのコストを先送りして子孫にツケを回せば、まるで安全がタダで手に入るようにみえる。

しかしフリーランチはない。永遠に先送りはできないので、この「ネズミ講」では誰かが大損する。子供がそれに気づいたときは、増税かデフォルト(インフレによる実質的な債務不履行を含む)しか選択の余地がない。彼らはおそらく後者を選んで、親に復讐するだろう。それによって親もペイオフで1000万円以上の貯蓄がカットされ、インフレで金融資産が半減するからだ。

ロゴフもいうように、産業革命以後のほとんどの時期に、この世代間格差は大した問題ではなかった。技術進歩によって、子は必ず親より豊かになったからだ。しかし日本のように人口減少期に入ると、この格差は成長で埋められない。親に子供の分の選挙権も与えるドメイン投票という案もあるが、親が子の利益を考えるとは限らない。

これは金融の問題とも共通している。不良債権を隠すために政府がbailoutすることは、事後的にはパレート効率的だが、こうしたソフトな予算制約が社会主義を崩壊させた。財政破綻によって「日本型社会主義」が崩壊して資本主義になるとすれば、われわれの子孫には希望もあるかもしれない。