佐藤優氏の意見はナンセンスなものが多いが、彼の専門の外交については的確だ。今週のブログ記事では、韓国が「慰安婦」の問題を国連に提起しようとしていることに外務省が警戒するよう呼びかけている。

当ブログでも、4年前に安倍政権でこの問題が再燃したとき取り上げ、膨大なコメントがついたが、初めに結論ありきの某弁護士以外は、全員が「慰安婦の強制連行」を否定し、誤報によってこの問題の火付け役になった朝日新聞も、強制の証拠を出せなかった。これは今では韓国人でさえ認めている歴史的事実であり、論じるまでもない。

問題は、韓国がまたこれを政治的に利用しようとしていることだ。これは韓国の憲法裁判所が政府の「不作為」を憲法違反とする判決を出したためのアリバイ作りという印象が強いが、また嘘つきのノリミツ・オオニシ記者などの海外メディアが、この問題をおもしろ半分に取り上げるおそれが強い。この国際的な誤解は、最強硬派の安倍元首相でも解くことができなかったので、野田首相には不可能だ。

日本軍がアジアを侵略したことも、公娼(当時は売春は合法だった)の経営に関与したことも事実だが、軍が娼婦を拉致したなどという荒唐無稽な話が世界史に残されてよいはずがない。解決手段は、最初に嘘をついた朝日新聞が誤報を認めることしかないが、これも彼らが「強制があったかどうかは大した問題ではない」などと開き直っているので、もう無理だろう。

この問題は、朝日新聞の無責任な体質をよく示している。アジアに謝罪する「空気」に迎合して、軍が武力を使って性犯罪を行なったという話をすれば、人々の好奇心をかき立てて新聞は売れるだろう(当時、男性の強制連行を取り上げた私の番組は話題にもならなかった)。それが嘘だと判明しても、訂正も謝罪もしない。かつて大本営発表を垂れ流しておきながら、戦後も経営陣が居座ったのと同じだ。

このときの責任者、外岡秀俊編集局長は私の記事を読んだそうだが、何も答えないで退職してしまった。朝日の記者によれば、彼は個人的にはまずかったと思っているようだから、せめて個人ブログでこの問題に答えてはどうだろうか。