ギリシャ支援についての欧州各国の協議が再開された。7月に決まった救済策でも、まったく情勢が好転せず、2年物金利はついに70%を超えた。これはもう市場がデフォルトを織り込んでいるということだろう。

Economist誌も、ギリシャはinsolvent(債務超過)と断定し、もうbailoutはやめて債務整理を開始すべきだと主張している。ただポルトガルやアイルランドは危ないがsolventなので、ECBが全面的にバックアップして流動性を供給すべきだという。

ギリシャをユーロからたたき出したら、ただちに全面的なデフォルトになり、リーマン・ショック以上の大惨事になるだろう。他方、ドイツなどが金融支援をいやがってユーロから離脱したら、ユーロが暴落してマルクが暴騰し、ドイツの輸出産業は壊滅するだろう。ユーロの実験は失敗だったが、今やめることはできない。

日本の政府債務は、GDP比でいえばギリシャよりはるかに悪いが、資金はむしろ円に逃避している。では日本の財政は心配ないのかといえば、『日本経済「余命3年」』でも論じたように、長期的には破綻するリスクが大きい。今のように金利が安定しているうちに手を打たないと、取り返しのつかないことになるだろう。

といっても、ギリシャのようなことになるとは思えない。せいぜいスペインかイタリアぐらいだろう。それでも今はきびしい歳出削減と増税を迫られている。おそらく日本でも、消費税は25%ぐらいにしないとプライマリーバランスの黒字化はできないだろう。究極の問題は、5%を10%にするのに15年以上かかっている政治家にそれができるのかということだ。できなければ、最後の手段はハイパーインフレ(による部分的デフォルト)しかない。

国会では3次補正や復興増税など目先のことばかり議論しているが、長期的にどうやって財政を再建するのかという見通しなしに、申し訳のような「無駄の削減」なんかやってもしょうがない。年金特別会計の積立不足が800兆円を超える社会保障の削減こそ本丸なのに、与野党ともこれにふれないのは奇怪だ。この点では、日本の政治家の質はギリシャといい勝負だろう。