持続可能なエネルギー―「数値」で見るその可能性ビル・ゲイツのねらいは原発推進ではなく、温室効果ガスを減らすことだ。彼は再生可能エネルギーにも投資しており、特にアメリカには広大な砂漠があるので、風力発電が有望だという。太陽光も有望だが、今の太陽電池はコストが高くて化石燃料に太刀打ちできない。だから今の技術に補助金を出す政策はナンセンスで、研究開発を補助すべきだ。

彼が推薦してくれたエネルギー問題のガイドブックが本書で、原著はまるごと著者のウェブサイトで読める。著者はケンブリッジ大学の教授で、科学者らしく徹底的に数字にもとづいて、多くのグラフでエネルギー問題を解説している。

彼の試算は再生可能エネルギーに好意的だが、環境問題が大きな障害だ。イギリスは欧州でもっとも風力に恵まれているが、風力発電は騒音問題でいやがられるので、立地できる面積が限られる。太陽光は採算が合わない。この結果、図のように水力やバイオマスなどを合わせても、再生可能エネルギーでまかなえる最大エネルギーは、イギリスの一人あたりエネルギー消費125kWh/日の15%程度だという。


日本の場合は地熱もあるが、これも環境問題を考えると拡大の余地は少ない。温室効果ガスを減らすという点でもコストの点でも、圧倒的に有利なのは原子力である。イギリスの場合、原子力なしで化石燃料をやめると、最大72%のエネルギーを輸入しなければならないという。日本の場合は電力の輸入というオプションがないため、原発を減らす分はほとんど火力でまかなうしかないだろう。