Martin Wolfも世界経済の「日本病」にコメントしている:マーケットは「二番底」を心配しているが、それは間違いだ。なぜなら一番目の不況が終わっていないからだ。

主要6ヶ国のうち、実質GDPが2008年の金融危機以前のレベルに戻った国は一つもなく、日本とイタリアとイギリスは特に悪い。これはRogoffのいう「第2の大不況」になるおそれが強い。第1はもちろん30年代の大恐慌だが、いま世界のたどっている道は当時のアメリカより90年代の日本に似ている。

第1に、バブル崩壊で過剰債務が発生する。第2に、政府がそれに適切に対処せず、政治が混乱する。第3に、こうした不確実性が増した結果、安全資産である国債に資産が逃避し、長期金利が下がる。「米国債はデフォルトのリスクがある」としてすべて売却したPIMCOのビル・グロスは、「誤った判断をし眠れない夜を過ごしてきた」と敗北宣言をした。

ゼロ金利になって金融政策はきかないので、残された手段は財政政策しかないが、政府債務が膨張したため、それはどこの国でも政治的な駆け引きの材料になり、かえって経済に悪い影響を与える。必要なのは、もっと大胆な金融・財政政策を打つことと、民間部門の過剰債務を減らすことだ――とWolfはいうが、「大胆な政策」の中身はわからない。

先輩の日本人としていわせてもらうと、こういう日本病になると、マクロ的な財政・金融政策はもうきかない。むしろWolfも言っているミクロ的なdeleveraging(不良債権の最終処理)を急ぐことが決定的に重要だ。日本はそれを先送りしたために金融システムが崩壊して、いまだに立ち直れない。日本の最大の教訓は、ソフト・ランディングしようとすると、問題はかえって長期化し、傷は深くなるということである。