放射線のひみつ今週のAERAのカバーストーリーは「ふつうの子供産めますか」。この記事を書いた山根祐作という記者は、高校レベルの生物学も知らないらしい。こういう反原発団体が子供を使って流す放射能デマが、被災者に対する差別を生むことがわからないのだろうか。

子供が放射線を浴びると大人より発癌リスクは大きいが、彼らの産む子孫に奇形児や遺伝病が起こることはありえない。体細胞に対する放射線の影響は個体変異であり、遺伝しないからだ。妊婦が放射線を浴びた場合は胎児に影響が及ぶ可能性があるが、妊娠期間中に100mSv以上を浴びないと影響は出ない、と本書は指摘する。

放射線の影響に閾値があるかどうかについては、長く論争が続いているが、本書もいうように100mSv以下の被曝量で癌が増えるという証拠はないというのが医学界のコンセンサスである。生物は38億年間、大量の放射線を浴びながら進化しており、遺伝子を修復する機能をそなえているからだ。原爆のように一挙に大量に放射線を浴びるとその修復能力を超えるが、微量放射線の影響は統計的に有意ではない。

だから国が「計画的避難区域」の基準としている20mSv/年にも科学的根拠はなく、IAEAによる行政的な基準にすぎない。その依拠しているICRPの基準は、遺伝子の修復機能がわかっていなかった50年以上前に決まったもので、科学的に疑問のあるLNT仮説にもとづいている。影響がよくわからないときは「安全側に立つ」というのは、緊急時の対応としてはやむをえないが、そろそろ落ち着いて平時の基準を考えてもいいだろう。

ICRPの111報告書では、福島事故について放射線の基準を「緊急時被曝」から「現存被曝」に変更することを勧告した。現在の20mSv基準で除染や賠償を行なうと、コストが莫大になることが予想される。福島第一原発の状況はほぼ安定し、新たに放射性物質が大気中に排出される見込みはないので、環境基準をどう設定することが費用対効果から考えて望ましいのか、政府でもあらためて議論してはどうだろうか。