こういうことはしたくなかったが、研究者がツイッターで他人を罵倒して、それに反論されたらログを削除して逃げるという卑怯な行動をとったので、記録を残しておく。

明治学院大学教授の稲葉振一郎氏は、「アゴラ」の記事で私が「リフレ派は『一般物価は中央銀行の出す通貨量で決まる』という素朴な貨幣数量説を主張する」と書いたことについて、7月25日にこういうつぶやきをRTした:
shinichiroinaba: いったいいくつの嘘が含まれているんだろう。数えきれない。「リフレ派は…素朴な貨幣数量説を主張する」完全な嘘。また、長期的な貨幣中立性を、短期的にもデフレが無害であるかのように意図的に(?)混同している。
これは、もとは前田敦司という素人のつぶやきで、稲葉氏の真意がわからないので、私はこう質問した。
@shinichiroinaba 研究者が他人の記事を「完全な嘘」というのは、それなりに根拠があるんでしょうね。高橋洋一氏はリフレ派じゃないんでしょうか? bit.ly/plX2hu
これに対して、彼はこう答えた:
@ikedanob 一度落ち着いて、誰が何を言ったのかをご確認されるとよいと思います。まあもちろん「リフレ派が素朴貨幣数量説に立っている」という命題は非常にあいまいかつ虚偽に近いとは思いますが。高橋洋一さんにせよ飯田泰之さんにせよ期待の重要性は強調しておられる。
これに私はこう反論した:
@shinichiroinaba 「非常にあいまいかつ虚偽に近い」というのは曖昧ですね。少なくとも高橋氏はそう書いているのだから、「虚偽」ではありえない。これ以上、撤回も謝罪もしないで逃げ回るなら、ツイッターでさらしますよ。
この直後に彼は私をブロックし、私とのやり取りをすべて削除した。しかし気の毒なことに、Twilogにログが残っているので、上のやり取りはすべて確認できる。

要するに、彼は撤回も謝罪もしないで逃げたわけである。彼は社会学部の教員だから、経済学の知識がないのはしょうがない。しかし研究者が他の研究者の記事を根拠なく「完全な嘘」と決めつけるのは名誉毀損であり、指摘されたら訂正して謝罪するのが常識だろう。「完全な嘘」は稲葉氏のつぶやきのほうである。自他ともにリフレ派と認める高橋洋一氏は、こう書いているからだ:
高校生のための経済学 一般物価は中央銀行の出す通貨量で決まる。デフレ時に通貨増インフレ時に通貨減。個別価格はその商品の需給関係で決まる。供給が一定の場合需要増は価格上昇、需要減は価格下落。需要が一定の場合供給増は価格下落、供給減は価格上昇
また私が「長期的な貨幣中立性を、短期的にもデフレが無害であるかのように意図的に(?)混同している」というのも、元記事を読めばわかるように完全な嘘である。私は「定常的なインフレもデフレも予想に織り込まれれば害はない」と書いている。「定常的」という言葉が短期の概念かどうかも、稲葉氏は知らないのだろうか。

以上が事実関係のほぼすべてである(なお同じつぶやきを片岡剛士氏もRTしたが、これも削除されている)。判断は読者にゆだねるが、私はこのような議論のしかたは、たとえツイッター上とはいえ、きわめて無礼で非常識なものだと思う。稲葉氏の研究者としてのモラルはどうなっているのだろうか。リフレ派は、今やこのような卑怯なやり方でしか自分の立場を守れないのだろうか。

追記:稲葉氏は、相変わらず謝罪もしないで「ブロックしていたはず」と嘘の上塗りをしているが、それならどうして私のメンションが見えたのかね。きのう試しにフォローしたらできたよ。「完全な嘘つき」は誰かな。