気候変動とエネルギー問題 - CO2温暖化論争を超えて (中公新書)エネルギー問題を考える時ややこしいのは、地球温暖化という別の次元の問題がからむことだ。再生可能エネルギーが「長期の解」だという人は、これを考えているのだと思うが、彼らの論拠とするIPCCの報告書は科学的に疑問が多い。

以前の記事でも紹介したように、IPCCの売り物だった「ホッケースティック」は捏造であることが明らかになり、その中立性が疑われている。ただ、これまではその問題点を批判する研究が多く、CO2に代わる説明がなかった。本書は、その候補を紹介している。それは宇宙線である。

太陽の黒点活動と気温に相関があることはよく知られているが、エネルギーの流入量はそれほど大きく変化しない。だがデンマークのSvensmarkは2007年に、太陽活動によって宇宙線が減るのが原因だという説を発表した。太陽の磁場が強まると宇宙線がそれに吸収されて減り、宇宙線によってできる低層雲が減るというのだ。図1は宇宙線と低層雲の変化率を比べたものだが、きれいな相関が見られる。


図1:宇宙線(赤)と低層雲(青)の量の変化率

Svensmarkは、低層雲が減ると太陽光の反射が減って気温が上がると説明している。図2は宇宙線と気温の比較だが、過去2000年にわたる複雑な凹凸と宇宙線の変化にかなり相関がある。特に中世温暖期(10~14世紀)から15世紀以降の小氷期に至る変化と宇宙線の変化はかなり一致しているが、CO2とはまったく相関がない。

kirkby
図2:宇宙線の量(青)とアルプスの気温(赤) 出所:Kirkby

ただ、相関関係は因果関係を意味しないので、Svensmarkは宇宙線の増加が雲の結晶の核となる硫酸イオンなどを増やすことを実験で示し、CERNでもそれを支持する結果が得られたという。宇宙線については、IPCCの第4次報告書(2007)も検討し、証拠不十分として棄却したが、多くのデータがその後も発表されているので、再検討が必要だろう。

私は門外漢だが、科学的な手続き論だけで考えても、人為的温暖化説は統計的な証拠が弱く、因果関係もあやふやだ(温暖化がCO2増加の原因である疑いが強い)。それを学説として唱えることは自由だが、世界中の政府が何兆ドルも予算を投入するのは賢明とはいえない。本書によれば太陽活動は減退期に入っており、これから地球は寒冷化するという。あと5年ぐらい様子をみてもいいだろう。

しかもIPCCの報告書でさえ、100年後に2~3℃の気温上昇を予想しているだけで、地球温暖化対策は経済的には損失をもたらす。特にエネルギーの供給不足が深刻化する日本で、「温室効果ガス25%削減」などという非現実的な国際公約を守る意味はない。この問題も、政府が科学的根拠から「ゼロベース」で再検討してもいいのではないか。