東京都の石原知事は15日、「100万kWの発電所をつくる」と発表した。猪瀬副知事の提唱しているガスタービン(GTCC)だと思われる。都が発電所をつくるというのは異例の決定だが、オリンピックよりはずっとましな投資である。

いまだに朝日新聞や中島聡氏のように「原発か自然エネルギーか」という二者択一で議論する人が多いが、そんな図式は幻想だ。さすがに孫正義氏は「短期的には、天然ガス賛成。同時に中長期的解決として自然エネ建設を今開始すべき」といいはじめた。

しかし天然ガスは、なぜ「短期」の解なのか。孫氏は、1基2万kWの「メガソーラー」だけで日本の1億kWの電力が供給できると思っているのだろうか。化石燃料を「つなぎ」と考えるのは、地球温暖化を考えているからだろうが、問題は優先順位である。出力あたりのCO2が最小なのは原子力だが、これを除外すると、環境負荷の小さい再生可能エネルギーか、コストの安い化石燃料かという選択になる。中でも多くの専門家がもっとも有利と考えているのがガスタービンである。

つまり実際の問題は脱原発か否かではなく、天然ガスか再生可能エネルギーかの選択なのだ。国民がデンマークのように電気代が2倍になってもいいから後者を選ぶなら、巨額の補助金を投入することもやむをえない。しかしGTCCでも大幅なCO2の削減が可能であり、発電単価はメガソーラーの1/10だ。「1990年比25%削減」という非現実的な国際公約を放棄すれば、ガスのほうが合理的な解だろう。もちろん0か1かの選択ではないから、電力を自由化して市場でベストミックスを決めることが望ましい。

当面は国民感情を考えると、古い原発を廃炉にするという意味での脱原発は避けられないが、それは「短期の解」である。エネルギー安全保障を考えると、長期の解は原子力だろう。化石燃料には価格リスクがあり、ビル・ゲイツもいうようにイノベーションの余地は原子力が最大だから、研究開発はやめないほうがいい。