私へのインタビューを含む提言集が出た。なかなかユニークなメンバーだ。私の話のうち、一部の人の神経を逆なでしそうな部分を引用しておこう:
反原発派のウソ
典型的なメルトダウンのイメージは、次のようなものだ。溶け落ちた2800度の燃料棒が圧力容器を溶かして、格納容器に出る。その中の水と反応して爆発し、格納容器も破壊するに至る。まさにチェルノブイリと同じで、非常に高温の死の灰が立ち昇るわけだ。非常に高温だから何キロも昇って行き、成層圏にまで達する。そこではジェット気流が吹いているから、下手をすると福島から200㎞離れた東京にも届いてしまう。半径100㎞規模の範囲が、放射性物質で汚染される可能性がある。
反原発派のウソ
典型的なメルトダウンのイメージは、次のようなものだ。溶け落ちた2800度の燃料棒が圧力容器を溶かして、格納容器に出る。その中の水と反応して爆発し、格納容器も破壊するに至る。まさにチェルノブイリと同じで、非常に高温の死の灰が立ち昇るわけだ。非常に高温だから何キロも昇って行き、成層圏にまで達する。そこではジェット気流が吹いているから、下手をすると福島から200㎞離れた東京にも届いてしまう。半径100㎞規模の範囲が、放射性物質で汚染される可能性がある。
もちろんそんな事態は全く起こっていない。実際には、広瀬氏や小出氏だって、今回が彼らの想定した最悪の事故ではないことも知っているに違いない。でも、それは言わない。あたかも、自分の予言したとおりの事故が起こったかのように言っている。広瀬氏は自分の本には、もっとひどい事態になって何万人も死ぬようなことが書いてあるのに。
つまり今回の事故は、これまで反対派が声高に主張してきた話がウソだったということを証明してしまったことになる。何も知らない人だけが、それに騙されている。彼らのように、今回の事故があたかもチェルノブイリ級のシビア・アクシデントであると誇大に騒ぐ人がいるものだから、あとの議論がすべてずれてくる。
行き着く先は、命には代えられないから、すぐに原発をやめようという極論だ。しかし、今回の原発事故では放射能で死んだ人はいないし、致死量の被曝をした人もいない。この事故で今後に死者が出ることは、いまのところあまり考えられない。議論の前に、まず、その事実をしっかり認識すべきだ。メルトダウンという言葉は、単に炉心が溶けることから原子炉が全壊する事故までいろいろな意味で使われるので、少なくとも政府は使わないほうがいい。
原発推進派が語らない事実
「原発反対派」の話にウソが多いからといって、「推進派」が正しいことを言っているかといえば、もちろんそんなことはない。原発事故では、最悪の場合には原子炉の底が抜けて大爆発に至る可能性があることは、工学的に明らかだ。今回も原子力安全委員会委員長の斑目春樹氏が、「割り切らなければいけない」という趣旨の発言をしたことで批判を浴びたが、これは当り前のことを言ったに過ぎない。
たとえば飛行機のエンジンが4つ全部止まったら落ちるからといって、5つ、6つ……と無限に増やしていくことなどできるわけがない。要するに、無限に安全性を高めることはできないのだから、言葉通り、どこかで割り切る必要がある。ところが、それだけで大問題になって国会で吊るし上げられるということであれば、誰も当たり前のことさえ言わなくなる。電力会社も国も、正直なリスク評価をしなくなってしまう。原発は「絶対安全」であると言うしかなくなるわけだ。
そのうえで実際に何をするかというと、原発の地元にカネをばらまいて、政治家やマスコミをみんな黙らせるという作戦に出るわけだ。実態は悪い方、悪い方にこじれていく。この20~30年の間、ずっとそんなことが続いてきた。
経済的な損害こそが想定外だった
いままで日本政府はこうした被害を想定してこなかった。原子力損害賠償法を見ても、万一の事故には1200億円を限度として、原子力事業者が賠償することになっている。たった1200億円だ。つまりいまのような事態に陥ることは、まったく想定されていなかったのだ。
今回の事故による損害額は、兆円規模でのさまざまな試算が出されている。そうなるとして、1200億円より上をどうするか、いまごろになって揉めている。保険というのは事故が起きる前に、確率をもとに割り引かれた保険料を払うのだから、事故が起きてから揉めてもダメだ。事故が起きたら確率は「1」だから、全額払う以外に方法はない。
実はこの問題は前から言われていた。IAEA(国際原子力機関)からも、1200億円では、本当に損害が出たら悩むことになると勧告されていたほどだ。この法案ができたときには、日本国内では別の意味で問題になった。損害を想定するということは、死者が出る可能性を認めているのではないかということだ。国は、原発で死者が出るような事故が起きることを前提にしているのかと。それに対して国が、死者は絶対出ませんと言ってしまった。その「建前」、逆に「事実」を当てはめてしまったわけだ。
しかし反対派は「リスクをゼロにしろ」と言うし、推進派も「ゼロでございます」と言い続けた結果、両方ともリスクはゼロだという建前に閉じこもってしまった。だから、1200億円という額の妥当性を検証したり、ましてや増額しようということにはならなかった。
いまごろになって電事連(電機事業連合会)が、もうちょっと出してくれと言い出しているが、後の祭りだ。電事連だって、昔は喜んでいたのだ。彼らは事故なんて起こらないと考えており、安い保険料で済めば助かると思っていた。これまで誰もが、日本的建前論の中で、自分たちの願望に合わせて、事実を勝手に過小評価してきた。それがここに来て全部破綻したと言える。
つまり今回の事故は、これまで反対派が声高に主張してきた話がウソだったということを証明してしまったことになる。何も知らない人だけが、それに騙されている。彼らのように、今回の事故があたかもチェルノブイリ級のシビア・アクシデントであると誇大に騒ぐ人がいるものだから、あとの議論がすべてずれてくる。
行き着く先は、命には代えられないから、すぐに原発をやめようという極論だ。しかし、今回の原発事故では放射能で死んだ人はいないし、致死量の被曝をした人もいない。この事故で今後に死者が出ることは、いまのところあまり考えられない。議論の前に、まず、その事実をしっかり認識すべきだ。メルトダウンという言葉は、単に炉心が溶けることから原子炉が全壊する事故までいろいろな意味で使われるので、少なくとも政府は使わないほうがいい。
原発推進派が語らない事実
「原発反対派」の話にウソが多いからといって、「推進派」が正しいことを言っているかといえば、もちろんそんなことはない。原発事故では、最悪の場合には原子炉の底が抜けて大爆発に至る可能性があることは、工学的に明らかだ。今回も原子力安全委員会委員長の斑目春樹氏が、「割り切らなければいけない」という趣旨の発言をしたことで批判を浴びたが、これは当り前のことを言ったに過ぎない。
たとえば飛行機のエンジンが4つ全部止まったら落ちるからといって、5つ、6つ……と無限に増やしていくことなどできるわけがない。要するに、無限に安全性を高めることはできないのだから、言葉通り、どこかで割り切る必要がある。ところが、それだけで大問題になって国会で吊るし上げられるということであれば、誰も当たり前のことさえ言わなくなる。電力会社も国も、正直なリスク評価をしなくなってしまう。原発は「絶対安全」であると言うしかなくなるわけだ。
そのうえで実際に何をするかというと、原発の地元にカネをばらまいて、政治家やマスコミをみんな黙らせるという作戦に出るわけだ。実態は悪い方、悪い方にこじれていく。この20~30年の間、ずっとそんなことが続いてきた。
経済的な損害こそが想定外だった
いままで日本政府はこうした被害を想定してこなかった。原子力損害賠償法を見ても、万一の事故には1200億円を限度として、原子力事業者が賠償することになっている。たった1200億円だ。つまりいまのような事態に陥ることは、まったく想定されていなかったのだ。
今回の事故による損害額は、兆円規模でのさまざまな試算が出されている。そうなるとして、1200億円より上をどうするか、いまごろになって揉めている。保険というのは事故が起きる前に、確率をもとに割り引かれた保険料を払うのだから、事故が起きてから揉めてもダメだ。事故が起きたら確率は「1」だから、全額払う以外に方法はない。
実はこの問題は前から言われていた。IAEA(国際原子力機関)からも、1200億円では、本当に損害が出たら悩むことになると勧告されていたほどだ。この法案ができたときには、日本国内では別の意味で問題になった。損害を想定するということは、死者が出る可能性を認めているのではないかということだ。国は、原発で死者が出るような事故が起きることを前提にしているのかと。それに対して国が、死者は絶対出ませんと言ってしまった。その「建前」、逆に「事実」を当てはめてしまったわけだ。
しかし反対派は「リスクをゼロにしろ」と言うし、推進派も「ゼロでございます」と言い続けた結果、両方ともリスクはゼロだという建前に閉じこもってしまった。だから、1200億円という額の妥当性を検証したり、ましてや増額しようということにはならなかった。
いまごろになって電事連(電機事業連合会)が、もうちょっと出してくれと言い出しているが、後の祭りだ。電事連だって、昔は喜んでいたのだ。彼らは事故なんて起こらないと考えており、安い保険料で済めば助かると思っていた。これまで誰もが、日本的建前論の中で、自分たちの願望に合わせて、事実を勝手に過小評価してきた。それがここに来て全部破綻したと言える。