3・11後 日本経済はこうなる! (朝日新書)4人の著者と共同執筆した緊急出版(朝日新書)が6月13日に発売される。内容は、今回の震災で日本経済がどうなるかをマクロ経済・エネルギー問題・震災復興などの各論までわけて論じたものだ。アゴラブックスから電子版も発売する。

 第1章 原発の時代の終わり(池田信夫)
 第2章 供給制約と財政危機(小黒一正)
 第3章 エネルギー戦略の岐路(澤昭裕)
 第4章 スマートグリッドで実現する次世代の電力網(村上憲郎)
 第5章 震災復興をどう進めるか(小幡績)
 終章 選択と集中が必要だ(池田信夫)

まえがきの一部を引用しておこう。
2001年の同時多発テロは「9・11」と呼ばれ、世界に衝撃を与えました。「3・11」とも呼ばれる東日本大震災は、それにまさるとも劣らない日本の歴史の転換期になるような気がします。もちろん地震そのものが歴史を変えるわけではなく、これまで起こると予想されていた変化が加速したといってもいいでしょう。

第一の変化は震災によって2万人以上の人命が失われただけではなく、生産能力が喪失し、サプライチェーンの破壊で流通が混乱したこと、第二の変化は福島第一原発の事故によって電力が不足し、原発の新設が困難になったことでエネルギー価格の上昇が予想されることです。

日本経済は、これまで生産能力が余って需要が足りないためにデフレが続いているといわれてきましたが、今回の震災で起こった電力不足は日本が供給制約の時代に入ったことを象徴しています。労働人口はすでに減りはじめ、貯蓄率も遠からずマイナスになるでしょう。0.5%まで下がった潜在成長率はほとんどゼロになるでしょう。

このような変化は、震災前から警告されてきましたが、政治はこうした変化に向き合わず、財政出動やバラマキ福祉で問題を先送りしてきたため、政府債務が破滅的な規模に膨張しています。こうした経済の衰退と政治の劣化が、今回の震災では顕在化しました。

後世の歴史家が振り返ると、今度の大震災は衰退する日本にとどめを刺した出来事と位置づけられるかもしれません。原発は大量生産・大量消費の高度成長の象徴でした。そういう豊かさを「あまねく公平」にわけあう生活が原発とともに終わり、これからは縮んでゆく経済の中で、無駄なものを切り捨てる決断が必要になるでしょう。