Power Hungry: The Myths of "Green" Energy and the Real Fuels of the Future震災から2ヶ月以上たって、にわか作りの原発本が山のように出てきたが、読むに値する本は残念ながら1冊もない。原発の恐怖をあおる本ばかり読んでいるとバランス感覚がおかしくなるので、エネルギー問題を客観的に論じた本をあげておこう。4までは英語だが、どれも入門書なので読みやすい。4と5以外はKindleで買える。
  1. Smil: Energy Myth and Realities
  2. Bryce: Power Hungry
  3. Montgomery: The Powers That Be
  4. Ferguson: Nuclear Energy
  5. 松井賢一:エネルギー問題!
1は先週の記事でも紹介した、この分野の代表的な研究者による最新の解説。ビル・ゲイツも絶賛している。2は、オバマ政権の「グリーン・ニューディール」に代表される再生可能エネルギーの限界を明らかにし、エネルギーを低価格で安定供給する戦略を考える。著者の推奨するのは、短期的には天然ガス、長期的には原子力だ。

3は教科書的に、エネルギー源ごとにその長所と短所を解説している。これも原子力と天然ガスが有力だとしているが、再生可能エネルギーにも好意的だ。4は原子力エネルギーの教科書で、今月出たばかりなので福島第一事故の記述もある。大学のサイトでも動画で解説しているが、Fukushimaはアメリカでも深刻な政治的問題を引き起こしているようだ。皮肉なことに、これが福島事故についてのもっとも客観的な分析だろう。

こうした英語の本に比べると、日本語の本の質の悪さが目立つ。特に事故後に出た本はどれも「原発が恐い」の類の党派的な話ばかりで、読まなくても結論がわかる。他方、原発推進派の本はバラ色の話ばかりで、エネルギー問題をバランスをとって考える本がほとんどない。その中では、震災前に出た5が中立の立場から日本のエネルギー問題と政策を解説している。