きのう次期リーダーのナンバーワンに選ばれた河野太郎氏に、BLOGOSチャンネルでインタビューした。最大の話題は、もちろん先週出てきた「賠償スキーム」だ。東電を丸ごと救済して株主を守る一方、債権放棄を求める政府の方針は支離滅裂だが、なぜこんな案が出てきたのだろうか。

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河野氏の見立ては「一般会計からビタ一文も出したくない財務省の仕掛け」だが、私の聞いた話は「(メインバンクの)三井住友の持ち回ったパワーポイントとそっくり」というものだ。初期に三井住友の流した案は、政府の設立する「原発賠償機構」が賠償を立て替え、その請求する賠償金を(今のまま存続する)東電が支払うというものだったが、閣僚会議で決まったスキームでは、賠償を行なうのは東電で、賠償機構はそこに出資するだけだ。

いずれの案でも、最大のポイントは東電を破綻処理しないことだ。これは東電が破綻していないからではなく、破綻させると銀行が困るからだ。JALの場合は会社更生法で処理されたので、株式は100%減資され、長期債務と社債は87.5%カットされ、産業再生機構が9000億円の国費を投入した。これが銀行(および財務省)のもっとも恐れるシナリオで、そのために国が支援して東電を存続させるのだ。

財務省にとっては一般会計から1円も出さないことが絶対条件なので、賠償機構が立て替えて東電の資金繰りが行き詰まると、機構が東電に対する不良債権を抱えてしまう。だから東電を前面に出し、その資金繰りが行き詰まったら電気代に転嫁するよう仕向けたのだ。東電だけで転嫁すると大幅な値上げになるので、他の電力会社にも奉加帳方式で負担させる。

・・・というのが河野氏と私の推測だが、たぶん大きくは外れていないと思う。要するに、一般会計の赤字は増えない代わりに、全国の電力利用者にツケを回すスキーム(悪だくみ)なのだ。会社更生法を適用すると、株式が減資されるばかりでなく、銀行の融資もカットされる。株主を守れば債権者も守れる――と思ったのが銀行の甘いところだ。

なんと枝野官房長官は、このスキームの発表で「銀行は債権放棄するのが当然だ」と発言したのだ。その直後の記者会見で三井住友HDの社長が絶句したように、これは資本主義の原則に反する。もっとも劣後する株式を守って、それより優先される債権を放棄することはありえない。

つまり東電の株主を守ることによって自分の債権を守ろうとした銀行のたくらみは、商法を無視した(知らない?)枝野氏によってぶち壊しになってしまったのだ(彼は弁護士である)。河野氏によれば、今回のスキームについて外人投資家は「まったく理解できない。まさかこれが法律になるんじゃないだろうな」と言ったという。それは日本が資本主義に別れを告げる画期的な法律になるかもしれない。