jpg~5CJPEG~5C20110219~5CJPEG~5C3a1ca5c3-ATCSF13福島第一の事故で、原発がすべてだめと断定するのは早計だろう。大出力の軽水炉で炉心溶融が起きた場合に原子炉を破壊するリスクがあることは、理論的にはわかっており、これを工学的に避けることはむずかしい。可能なのは出力を小さくして、万が一溶融しても原子炉を破壊しないように設計することだが、これでは規模の経済がないので、火力などと競争できない。

そこでまったく違う設計で事故を起こさない原子炉が開発されている。東芝傘下のウェスティングハウスは、SMR(small modular reactor)という新しいタイプの原子炉を今年2月、発表した。出力は20万kW級と現在の原子炉の約1/5で、部品がモジュール化されて大量生産でき、ツーバイフォーの住宅のようにトラックで運んで組み立てるだけで建設できる。

SMRの特徴は、ECCSのような安全装置がなくても、炉内の温度が上がり過ぎると自動的に運転が止まる受動的安全装置をつけたことだ。新興国に輸出する場合、オペレーターは十分な知識をもっていないが、SMRはコンピュータで自動制御されるため、原理的に炉心溶融が起こらないという。米エネルギー省のSteven Chu長官も、SMRを補助金などで支援する意向を表明している。

また東芝はビル・ゲイツ氏が出資する原発ベンチャー「テラパワー」と共同で、TWR(traveling-wave reactor)と呼ばれる原子炉を開発すると発表した。この他にも、PBR(pebble bed reactor)など、経済的で(原理的には)安全な原子炉の開発は進んでおり、軽水炉だけが唯一の原発というわけではない。