きのうのUstream中継では、東京都知事に出馬を表明している渡辺美樹氏と対談した。記者クラブ的な常識では、「石原後継」とみられる松沢成文神奈川県知事が本命だろうが、それではよくも悪くも大きな変化は期待できない。

「地域主権」とか「道州制」とかいう話は、もう30年ぐらい言われ続けているが、何も前進していない。地方自治体は総論では自主性を求めるが、本音では霞ヶ関からの所得再分配を求めているからだ。日本の隅々まで「あまねく公平」にという護送船団方式では、みんな一緒に沈んでいくだけだ。

東京は単なる地方自治体ではなく、GDPで比較するとオーストラリアやオランダ並みの都市国家である。17世紀以来の主権国家(領土国家)の時代が終わり、これからは都市間競争の時代だ。護送船団では、上海やシンガポールとの競争に勝てない。泥舟になった日本を見捨て、東京だけでも生き残る戦略が必要だ。

この点で渡辺氏が「東京だけでも特区にしてTPPに入りたい」と言ったのはおもしろいが、条約を結ぶのは都に国家主権がないと無理だろう。それよりも彼が提案する教育バウチャーや法人税の廃止など、独自の条例を制定して香港のような一国二制度にすればいいのではないか、と私が提案したら、渡辺氏は「それはおもしろい」と言っていた。

ポール・ローマ-は、スタンフォード大学を辞めてそういうプロジェクトに取り組んでいる。彼の主宰するCharter Citiesは、世界各国に香港のような独自のルールをもつ「憲章都市」をつくるNGOだ。彼の念頭にあるのは途上国だが、これから途上国の仲間入りしそうな日本も入れてもらってもいいだろう。

あまりにも多くの「貸し借り」を背負った霞ヶ関では、本質的な改革はできない。渡辺氏が都知事になったら、ローマ-を顧問にして、東京を憲章都市とすべく霞ヶ関と闘うのがいいと思う。彼はノーベル賞の最有力候補であり、官僚は外人と学問的権威に弱いからだ。