大晦日の夜10時30分から現代ビジネスのUstream討論に出て、12時半に終わったらテレビ朝日に直行して1時半から「朝まで生テレビ」という、レコ大から紅白に移動するようなスケジュールで6時間も討論会につきあうはめになった。他の出演者をみると、またリフレ論争になりそうだが、初歩的な話を繰り返すのは時間の無駄なので、予習しておこう(おさらいなので、今までの記事を読んだ人は読む必要はない)。
gendai
まず高橋洋一氏のいう「ベースマネーの上昇率と物価上昇率には強い相関関係がある」という話は、明白に誤りである。上の図は日銀の供給するベースマネー(青)と消費者物価指数(赤)の対前年比だが、何の関係もない。したがって準備預金を積み増す量的緩和には意味がなく、それによって「円高を防ぐ」こともできない。

他方、物価を引き上げる効果という点からいえば、日銀の包括緩和のようにREITやETFを買ったり、FRBの信用緩和のように証券化商品を買ったりするのは(理論的には)効果がある。しかしこれは池尾和人氏も指摘するように、政策金融と同じ財政政策である。政策金融は無駄な公共投資の温床として見直しの対象になっているのに、日銀が国会の承認もなしに政策金融をやるのは問題が多い。

民主党のデフレ議連などの騒いでいる日銀法の改正は、デフレ対策には役立たない。インフレ目標を定めただけでは、インフレは起こらないからだ。「手段を問わずに2%のインフレを起こせ」という法律をつくると、日銀は不動産や株式を大量に買うだろう。このような信用緩和によってインフレを起こすことは可能だが、日銀の損失は最終的には財政赤字になる。リフレ派の議論は、この量的緩和と信用緩和を混同しているものが多い。

なお日銀が「インフレにするぞ!」と宣言すれば国民がみんな(日銀に政策手段がなくても)インフレ予想をもつとか、「無税国家」がどうとかいう空想的な話は、時間の無駄である。要するにコストなしでデフレを止める「フリーランチ」はないので、デフレ対策を論じるなら、そのコスト(財政負担やバブル)も議論しないと欺瞞的な話になってしまう。