東京都の青少年健全育成条例の改正案が、来週の都議会で可決される情勢になってきた。この問題についての石原都知事の発言は、あまりにもナンセンスで論じる価値もない。かつて「太陽族」などの新風俗の元祖となり、「価値の紊乱者」を自称していた石原氏が、エロ漫画の撲滅に熱中する姿は哀れをもよおす。
そもそもこの条例の求める「健全な青少年」とは何なのか。大人が「有害な表現」を指定して子供の目にふれないようにするという発想の根底には、子供は未成熟な存在で、「不健全」な情報を与えるとその発育が阻害されるという発想があるのだろう。しかし最近の脳科学の成果が示すように、このように子供を「保護」する発想は間違っている。
脳細胞の数は生まれたとき最大で、その後は減ってゆく。神経回路の結合も子供のとき最大で、脳は自由に活動している。大人になる過程は、既成概念や社会規範に合わせてシナプスの結合を「刈り込む」ことである。だからエロ漫画によって子供の脳が「不健全に育成」されることはありえない。性的な刺激に反応する回路はもともと脳の中にあり、漫画によって発生するものではないからだ。それを禁止する動機がもっとも強いのは、自分の中の欲望を抑圧しているPTAの専業主婦だろう。
「海外では幼児の性表現は規制されている」という話がよくあるが、それは理性をそなえた大人が完成された存在で、子供を未完成な存在と考える啓蒙主義的な価値観によるものだ。子供や狂人のように理性をもたない者を隔離し、彼らを「教育」あるいは「治療」することによって秩序に組み込む制度の背景には、理性の名において秩序に反する者を社会から排除するメカニズムがある、というのはフーコーが繰り返し指摘したことだ。
このような偏見のない日本では、大人と子供の世界に本質的な区別はない。エロ漫画の主な読者は「青少年」ではなく、描いているのも大人である。日本のオタク系コンテンツが世界的な競争力をもっているのは、それが西洋的な啓蒙主義によって抑圧されている「子供的な想像力」を解放しているからだ。その程度のこともわからないで自由な表現を公権力で刈り取ろうとする石原氏を見ていると、つくづく年は取りたくないものだと思う。
脳細胞の数は生まれたとき最大で、その後は減ってゆく。神経回路の結合も子供のとき最大で、脳は自由に活動している。大人になる過程は、既成概念や社会規範に合わせてシナプスの結合を「刈り込む」ことである。だからエロ漫画によって子供の脳が「不健全に育成」されることはありえない。性的な刺激に反応する回路はもともと脳の中にあり、漫画によって発生するものではないからだ。それを禁止する動機がもっとも強いのは、自分の中の欲望を抑圧しているPTAの専業主婦だろう。
「海外では幼児の性表現は規制されている」という話がよくあるが、それは理性をそなえた大人が完成された存在で、子供を未完成な存在と考える啓蒙主義的な価値観によるものだ。子供や狂人のように理性をもたない者を隔離し、彼らを「教育」あるいは「治療」することによって秩序に組み込む制度の背景には、理性の名において秩序に反する者を社会から排除するメカニズムがある、というのはフーコーが繰り返し指摘したことだ。
このような偏見のない日本では、大人と子供の世界に本質的な区別はない。エロ漫画の主な読者は「青少年」ではなく、描いているのも大人である。日本のオタク系コンテンツが世界的な競争力をもっているのは、それが西洋的な啓蒙主義によって抑圧されている「子供的な想像力」を解放しているからだ。その程度のこともわからないで自由な表現を公権力で刈り取ろうとする石原氏を見ていると、つくづく年は取りたくないものだと思う。