当ブログでは2年以上前から取り上げてきた700MHz帯が、国際周波数に合わせて再編されることが決まったようだ。いったん「ガラパゴス周波数」で決まった方針をくつがえしたのは、孫正義氏を先頭とするツイッターの力である。また周波数オークションも初めて導入される方針で、私が10年以上言い続けてきたことがようやく実現したのは喜ばしい。

しかし問題は、その再編の方法である。これまでの報道によれば、既存の免許人の「立ち退き料」1000億円を新規参入業者に支払わせるためにオークションを行なうというが、これは無理である。合計100MHz以上の帯域の価値は1兆円以上あるので、入札価格は1000億円に貼り付いてしまう。最高価格の業者に落札すると、ごねて居座っている放送局が「棚ぼた」で3000億円以上の利益を得る。

こういう変則的なオークションは、アメリカの700MHz帯でも検討されたが、経済学者も「不可能」という結論を出し、FCCは補償金を払って普通にオークションを行なった。今回も総務省が1000億円の移行費用を出して周波数を取り戻し、普通にオークションすればよい。これはすべて帳簿上でできるので、実際に電波があくまでに再編でき、政府にも大きな売却益が入る。

総務省は、こういう過去に失敗した話を持ち出す前に、安田洋祐氏などのオークション理論の専門家に相談してはどうか。周波数オークションについては多くの研究の蓄積があり、問題点もその解決策もわかっている。上級の教科書としてはPCSオークションを設計したミルグロムを、入門書としては3Gオークションを設計したクレンペラーをおすすめする。