けさの朝日新聞の朝刊に、竹信三恵子編集委員の「『派遣社員は派遣禁止に反対』なのか」という記事が出ている。さすが朝日新聞、独自の調査をして派遣社員は派遣禁止に賛成しているという結果が出たのか、と思って読むと、出てくるのは「派遣ユニオン書記長」なる人物が、東大の社会科学研究所の調査の調査方法に個人的に文句をつけているだけで、何のデータも示されていない。
ところが竹信記者は明らかにこの書記長の立場に立って、調査を行なった東大の佐藤博樹氏に質問している:
ところが竹信記者は明らかにこの書記長の立場に立って、調査を行なった東大の佐藤博樹氏に質問している:
(竹信)今回の改正案は不安定な登録型派遣を禁止し安定的な常用型派遣へ誘導する狙いといわれます。調査で「派遣の禁止」への賛否を聞いたのは、全面禁止との誤解を誘導したとの反発もあります。
(佐藤)改正案は製造業派遣の原則禁止。禁止について聞くことで問題はない。
竹信氏は経営の初歩も知らないようだが、経営者が「不安定な登録型派遣」を雇うのは、運送・外食など繁閑の差の激しい業界ではピークに合わせて常用型派遣を雇うと、仕事のないとき労働力が余るからだ。したがって登録型派遣を禁止したら、その労働需要は常用型ではなく、もっと不安定な日雇いのアルバイトに移るだけだ。
派遣労働者は、ある企業に切られても派遣会社が他の企業を紹介してくれるが、アルバイトは切られたら終わりだ。派遣会社は労働者のサーチ費用を減らして支援するシステムであり、労働者からそのチャンスを奪うことは自然失業率を増やす。派遣労働者は非正社員の8%程度にすぎず、むしろ恵まれた労働者なのだ。
事実、昨年度の派遣労働者数は前年度に比べて24%減少した。メーカーが製造業の派遣禁止に備えて、生産体制を見直しているからだ。メーカーが日本から出て行く最大の要因は法人税率が高いことではなく、アドホックに強化される雇用規制である。派遣会社と派遣労働者の組合である人材サービスゼネラルユニオンは、公式見解で派遣労働の規制強化に反対している。
竹信氏の論理は、典型的な心情倫理である。派遣はかわいそうだから派遣を禁止しよう、と手段を自己目的化して、その結果としての失業の増加は気にしない。人殺しはよくないから軍隊をもつのはやめよう、という平和憲法の心情倫理が、日本の政治家やマスメディアを60年以上にわたって汚染してきた罪は大きい。
派遣労働者は、ある企業に切られても派遣会社が他の企業を紹介してくれるが、アルバイトは切られたら終わりだ。派遣会社は労働者のサーチ費用を減らして支援するシステムであり、労働者からそのチャンスを奪うことは自然失業率を増やす。派遣労働者は非正社員の8%程度にすぎず、むしろ恵まれた労働者なのだ。
事実、昨年度の派遣労働者数は前年度に比べて24%減少した。メーカーが製造業の派遣禁止に備えて、生産体制を見直しているからだ。メーカーが日本から出て行く最大の要因は法人税率が高いことではなく、アドホックに強化される雇用規制である。派遣会社と派遣労働者の組合である人材サービスゼネラルユニオンは、公式見解で派遣労働の規制強化に反対している。
竹信氏の論理は、典型的な心情倫理である。派遣はかわいそうだから派遣を禁止しよう、と手段を自己目的化して、その結果としての失業の増加は気にしない。人殺しはよくないから軍隊をもつのはやめよう、という平和憲法の心情倫理が、日本の政治家やマスメディアを60年以上にわたって汚染してきた罪は大きい。