クルーグマンがブログで、珍しくバーナンキの講演を高く評価している。
Monetary policy is working in support of both economic recovery and price stability, but there are limits to what can be achieved by the central bank alone. [...] a fiscal program that combines near-term measures to enhance growth with strong, confidence-inducing steps to reduce longer-term structural deficits would be an important complement to the policies of the Federal Reserve.
「中央銀行だけで経済を回復させるのは限界がある」というバーナンキの意見は、岩田規久男氏の非難してやまない日銀の白川総裁と同じだ。特にデフレ状態では財政政策の助けが必要だ、という点はクルーグマンと一致している。

今回の金融危機でわかったことは――2000年代の日本の経験と同じく――ゼロ金利制約のあるときは、量的緩和(quantitative easing)を含む狭義の金融政策はきかないということだ。きく可能性があるのは、証券化商品や株式などを買う信用緩和(credit easing)だが、これは財政政策の一種である。日銀はETFやREITを買うとき引当金を積んでおり、損失が出た場合には日銀納付金が減るという形で納税者の負担になる。

みんなの党の出した日銀法改正案のように、インフレ目標を設定すればデフレから脱却できるというのは、成長率の目標を設定すれば成長率が上がるというのと同じ呪術的な政策である。目標を設定するかどうかはどうでもいいことで、問題はインフレを起こせるかどうかだ。この改正案を書いた桜内文城氏もいうように、そのためには政府+日銀のバランスシートの赤字を拡大する財政政策を発動するしかない。

日銀法や財政法を改正するとすれば、こうした金融政策と財政政策の役割分担を明確にすることは考慮に値する(ニコ生でも飯田泰之氏は賛成だった)。アメリカでも、共和党が多数になった議会から「FRBの信用緩和は財政赤字を増やすリスクがある」と批判が出ているように、中央銀行が裁量的に信用緩和を行なうことには問題がある。財政支出を行なうかどうかは、第一義的には納税者の負託を受けた国会が決めるべきであり、日銀が機動的に行なう場合も内閣が承認する必要がある。