こんな日弁連に誰がした? (平凡社新書)大阪地検や尖閣諸島の事件で検察が集中砲火を浴びているが、これは氷山の一角だ。司法の劣化は、本書も指摘するように弁護士のほうがひどい。もちろん優秀な弁護士も多いが、オウム真理教の弁護で有名になった「ヨコベン」横山弁護士や、あるものをないと言い張るような頭のおかしい人物が、一人前に営業できる業界は珍しい。

特に一般社会と比べて目立つ特徴は、日弁連が雇い止めの禁止を求めたり、過払い訴訟で消費者金融を壊滅させた宇都宮弁護士を会長にするなど、社会の迷惑をかえりみないで独善的な「正義」を追求する左翼バイアスが強いことだ。

本書はこの原因として、団塊世代の学生運動で逮捕歴のある学生が就職できず、弁護士になった影響が大きいという。これは民主党政権に弁護士出身者が多い原因でもあるが、彼らはビジネスに携わった経験がないので、学生時代の社会主義への情熱を今も持ち続けている。彼らはもう60代だが、各地の弁護士会の幹部になっているため、組織として左翼バイアスが抜けず、若い弁護士と大きなギャップができているという。

他方で裁判所には、政治介入を受けやすいバイアスがあり、この両者の「冷戦」の意図せざる結果として、ロースクールやら裁判員やら、わけのわからない「司法改革」を次々にやった結果、もともと質の低い日本の司法はボロボロになってしまった。特にロースクールを濫造して大量の浪人を生み出し、合格者も500人から一挙に2000人を超えたため、生活のできない若手弁護士が激増しているという。

この根本には、著者もいうように日本の国家機構に法の支配が欠如しているという問題がある。明治以来、「天皇の官吏」が国家を支え、政治家はその利益を地元に誘導し、司法はオマケみたいな存在でしかない。問題が起きても、ルールにもとづいて当事者間で解決するシステムの確立していない国で、弁護士だけ増やしたら失業するのは当然だ。今の悲惨な状況を変えるには、官僚が立法や司法の役割まで兼ねる「国のかたち」を変える大きな改革が必要であり、それは容易なことではないだろう。