日本のIT産業がだめになっている一つの原因は、ソフトウェアの生産性が落ち、世界に通用しなくなっていることだ。その原因を中島聡氏はこう説明する:
米国のソフトウェアビジネスにとってのソフトウェアエンジニアは,球団経営における野球選手のような存在。ストックオプションなどを駆使した魅力的な雇用条件を提供して優秀な人材を集め,スポーツ施設や無料のレストラン,広い個室などの心地良い労働環境を提供して,彼らの生産効率を上げることが,ビジネスを経営するうえで最も大切なことの一つである。
これに対して、日本のソフトウェアはITゼネコンと呼ばれる大手ベンダーが受注し、仕様を決めて下請け・孫請けに発注する多重下請け構造になっている。この結果、日本のソフトウェア開発には次のような特徴が生まれた:
それは偶然ではない。情報機器はもはや事務機ではなく遊び道具であり、IT産業はエンターテインメントに近づいているからだ。日本のIT業界でほとんど唯一、世界レベルの競争力をもつ任天堂も、120年前から「遊びの会社」であり、そのDNAがイノベーションに結びついている。ゲームソフト業界は非常に人材の流動性が激しく、それが創造的なエネルギーになっている。
ところが日本では、中核業務であるソフトウェア開発が下請けに出されているため、エンジニアは低賃金・長時間労働を強いられ、技術が親会社に蓄積しない。この一つの原因は、雇用慣行と解雇規制である。大企業では社員を解雇できないので、専門的な技能をもつ人材を直接雇用すると、その技術が必要なくなったときクビにできない。そこで社員としては何でも屋のサラリーマンを雇い、専門的な仕事は下請けにやらせるわけだ。メディアにも、同じ構造がみられる。
だから労働市場の硬直性は、単なる雇用問題ではない。JBpressにも書いたが、日本の労働市場は構造的なミスマッチが大きく、人材の流動性が非常に低いことが長期低迷の大きな原因だ。「1に雇用、2に雇用、3に雇用」などといって中高年の正社員の既得権を守る民主党政権では、ITゼネコン構造は是正できず、日本経済の停滞も終わらない。
- 労働集約型のビジネスモデル:コストを「人月」で計算し、価格を「原価+適正利潤」で算出する
- 開発の下請け化:ソフトウェア開発のほとんどは下請けや派遣労働者が行ない、ITゼネコンは仕様の決定と工程管理を行なうだけ
- ウォーターフォール型の開発:工程が階層型になっているため、所定の仕様にもとづいて下請け・孫請けに出され、イノベーションが生まれない
それは偶然ではない。情報機器はもはや事務機ではなく遊び道具であり、IT産業はエンターテインメントに近づいているからだ。日本のIT業界でほとんど唯一、世界レベルの競争力をもつ任天堂も、120年前から「遊びの会社」であり、そのDNAがイノベーションに結びついている。ゲームソフト業界は非常に人材の流動性が激しく、それが創造的なエネルギーになっている。
ところが日本では、中核業務であるソフトウェア開発が下請けに出されているため、エンジニアは低賃金・長時間労働を強いられ、技術が親会社に蓄積しない。この一つの原因は、雇用慣行と解雇規制である。大企業では社員を解雇できないので、専門的な技能をもつ人材を直接雇用すると、その技術が必要なくなったときクビにできない。そこで社員としては何でも屋のサラリーマンを雇い、専門的な仕事は下請けにやらせるわけだ。メディアにも、同じ構造がみられる。
だから労働市場の硬直性は、単なる雇用問題ではない。JBpressにも書いたが、日本の労働市場は構造的なミスマッチが大きく、人材の流動性が非常に低いことが長期低迷の大きな原因だ。「1に雇用、2に雇用、3に雇用」などといって中高年の正社員の既得権を守る民主党政権では、ITゼネコン構造は是正できず、日本経済の停滞も終わらない。