WSJが社説で日本の経済対策と追加緩和を取り上げている。あまりにも当ブログの記事とそっくりで「WSJが池田信夫化した」というコメントがきたので、簡単に紹介しておこう:
日本の金融上の問題は、資金供給が不足しているのではなく、資金需要がないことなのだ。今年3月までの1年間の企業純貯蓄が国内総生産(GDP)に占める比率は7.3%だ。これは、多くの企業にはすでに、成長や雇用創出に向けた多額の手元資金があることを意味する。問題は企業がそうしたくないことだ。日銀が大手銀行50行の融資担当者を対象に実施した最新調査によると、過去3カ月で企業からの融資需要が僅かあるいはかなりあったと回答したのはゼロだった。

日本が真に必要としていることは、経済再建に取り組むことだ。それには減税、郵貯銀行の規制緩和あるいは民営化などの構造改革が必要になる。しかし、法人税減税提案の例外を除き、日本の政治家はこれらの改革路線に沿って努力することに抵抗してきた。現在は全く逆行している。菅首相率いる民主党政権は、当初の郵政民営化から後退し始めている。困難な政治的選択をするよりも、中央銀行を非難していることほうが格段簡単なことだ。
そしてWSJは「中央銀行だけで世界の経済問題を解決することはできない」というバーナンキFRB議長のジャクソンホール講演を紹介している。ここで彼は「もっと激しく緩和しろ」という批判に次のように反論している:
何人かのエコノミストが提案している異種の政策オプションは、中期のインフレ目標を物価安定レベルより高く設定することだ。FOMCでこの選択肢を支持する人はいない。確かに、このような手段はデフレが長期化し、中銀の物価安定能力に対する市民の信頼が大きく弱まり、何か劇薬が必要なときには意味があるかもしれない。ただ、現在の米国にとってそのような戦略は不適切だ。

FRBによる長期証券の購入や市場との対話の変更、準備預金金利の引き下げなど、FOMCが取り得る追加金融緩和策には、どれも利点と欠点とがある。[・・・]FRBは非伝統的な金融緩和政策を維持して、景気回復の下支えに努めている。もし、さらなる行動が必要なら、追加金融緩和策の用意はある。ただし、これらの手段をとる際には、利益と弊害とを注意深く判断することが必要だ。
日本の直面している最大の問題は投資(資金需要)の不足で、これは短期的な景気対策や金融緩和では治らない慢性の病気だから、経済の効率を改善する根気強い努力が必要だ――これはWSJだけでなく海外のメディアや経済学者がずっと言い続けてきた世界の常識で、理解するのにそれほど高度な専門知識はいらない。経済全体を客観的にみて、何がボトルネックになっているかを見きわめて政策の優先順位をつければ、おのずからわかることだ。