来週の週刊ダイヤモンドの特集は「解雇解禁」。といっても解雇が解禁されたわけではなく、解雇規制を解禁せよというキャンペーンだ。内容は、当ブログでも論じてきたように、中高年のノンワーキングリッチを過剰保護する解雇規制(および司法判断)が若年失業率を高め、世代間の不公平を拡大しているという話である。

完全失業率は5%程度だが、今春の大学卒業生の「無業率」は2割を超える。さらに企業の海外逃避も加速し、パナソニックは新規雇用の8割、ユニクロは5割を海外で採用する。その原因の一つが、強化される一方の雇用規制だ。民主党政権の「雇用重視」の政策は、企業を海外に追い出す「カントリーリスク」になりつつある。

社内失業を奨励して労働保持を増やす雇用調整助成金は、一昨年の10億円弱から昨年は6000億円以上に激増した。このため潜在失業率は、経産省の推定によれば図のように13.7%にのぼる。


おまけに、どの党も選挙民の反発を恐れて、この問題に取り組もうとしない。自民党は、先の参院選で「解雇規制の緩和」を打ちだしたが、選挙戦ではまったく言及しなかった。みんなの党は、昨年の総選挙では派遣労働の規制強化を打ちだしていたが、さすがに参院選では反対に転換した。しかし彼らも、この問題には選挙戦では何もふれなかった。

政治家が、まったく問題を認識していないわけではない。先日、ある党の勉強会で雇用問題の話をしたら、元党首が「あなたのいうことは理屈の上ではよくわかる。私も個人的には賛成だが、選挙で解雇規制を緩和するなんていったら絶対に勝てない」といった。増税と同じで、政権基盤のよほど強い政権でないと、手はつけられないだろう。

硬直的な労働市場は単なる労使問題ではなく、世代間の不公平を拡大し、人的資源の効率的配分を阻害して潜在成長率を低下させている。政治家が解雇規制の問題をタブーにしている限り、どんな「成長戦略」を打ちだしても日本は成長できない。それはデフレがどうとかいう問題より100倍ぐらい重要な、日本経済の最大のボトルネックなのである。

90年代に不良債権の処理を先送りした結果、その規模がふくらみ、最終的には日本経済を壊滅状態に追い込んだように、いま日本経済の抱える最大の「爆弾」は、長期不況で積み上がった人的不良資産である。労働保持は、目先は労働者にやさしいようにみえるが、経営効率化を阻害し、企業が破綻したら失業は顕在化する。日本経済の最悪の時はこれからである。