クルーグマンがブログ記事で日本の金融政策にコメントしているので、紹介しておこう:
日本が「デフレの罠」に入っているのは本当だが、日銀が「デフレターゲット」を設定しているなんてナンセンス。図のように日銀は量的緩和でマネタリーベースを極端に膨張させたが、デフレは止まらなかった。中央銀行が為替の増価を防ぐことができるというのも幻想で、スイスは今年、それを試みて失敗した。


日本から得られる教訓は、次の二つである:
  1. デフレの罠はリアルなもので、単にお札を印刷してもそこから脱却することはできない。

  2. デフレのとき、中央銀行は金融を引き締める理由をいろいろ見つけるが、それは彼らがデフレを好むからではない。
おおむね常識的な話であり、彼の批判するバーナンキさんとも、日銀についての認識はよく似ている。ただクルーグマンのいいたいのは、いったんデフレの罠に陥ると脱却は容易ではないので、FRBは無理しても金融緩和を続けろ、ということだろう(彼は「FRBはインフレターゲットを設定しろ」とは言っていない)。

しかしバーナンキは、こうした警告には同意しないと思われる。それは彼が2002年の講演で主張したことであり、「デフレ予防」のためにFRBが極端な緩和を続けたことが住宅バブルの原因だ、と批判を受けているからだ。不況期にインフレを心配する必要はないというのは大きな間違いで、バブル(資産インフレ)の多くは不況期に生まれている。日本の場合も、日銀のゼロ金利への強いコミットメントが、CPIの上昇ではなく国債バブルを生んでいる疑いが強い。