きのうアゴラ起業塾で、小池良次さんと話した。彼とは10年以上のつきあいだが、最初NYで彼と会ったころに比べると「日米の差は大きく開いた。もうアメリカの背中は見えない」というのが、われわれの一致した印象だ。アメリカのライバルとして大きな存在感を示し始めているのは中国とインドで、日本はアメリカ人の目に入っていないという。

その原因はいろいろあるが、何より大きいのが、日本の会社が古く、経営が老人に独占され、それに挑戦する新しい会社が出てこないことだ。せっかくスタンフォード大学に企業留学しても、日本に帰ったら「雑巾がけ」をやらされるので、優秀な学生は帰国しないで辞めてしまう。留学も激減し、昨年秋、ハーバード大学に入学した日本人はたった一人という状態だ。

インターネットによってIT産業は根底から変わったのに、日本で「クラウド」と称してデータセンターを作っているのは、戦前からある総合電機メーカー。その研究所に行くと、シリコンバレーなら数人でやっているようなシステム開発を大プロジェクトでやっている。グーグルは、日本ではソフトウェア・エンジニアを採用できない。大学で使えるソフトウェアを教えていないからだ。もう日本のソフトウェアは、世界では使い物にならない。

役所も外の世界を知らないから、自分たちが取り残されていることに気づかない。JETROがシリコンバレーの事務所で日系ベンチャーに補助金を出し始めたが、その審査はなんと霞ヶ関でやるという。IPAの補助事業であるソフトウェア開発は、ARMではなく日立のCPUでやらないと補助金が下りない。

「日本はどうすればいいのか」という私の質問に、小池さんは「自分はやれると思う日本人は、シリコンバレーに来たほうがいい。そうでない人は日本に残ればいい」といった。日本がどうすればいいかという問いには答がない。ここまで来ても官民ともに危機感がなく、格差是正とか「強い社会保障」とか内向きの話ばかりしている国にいるメリットは、企業にも個人にもない。バカ高い法人税を放置すると、もうかる企業からどんどん出て行くだろう。

ゴーン社長の役員報酬なんて世界標準から見れば安いほうなのに、首相が個人攻撃するような国には、日産はいないほうがいい。日産やソニーがNYに本社を移せば、鈍感な政治家も少しは目が覚めるのではないか。Hirschmanの有名な言葉でいえば、日本はもうvoiceで何とかなる段階を過ぎ、exitで彼らの目を覚ますしかないのだろう。