アゴラブックスの6月の新刊。4年前に新潮新書で出た旧版がいまだに息長く売れているので、データを大幅にアップデートして電子版のみで新版を出した。定価315円だが、最初の部分は立ち読みできる。購入すれば、PDF版も読める。

きのうのホリエモンとの対談でも電波行政の話が出たので、少し補足しておこう。彼もいうように、日本の「電波社会主義」は、立法と行政と司法の三権をすべて握る日本の官僚機構の象徴的存在だ。民主党が周波数オークションを提唱しても、電波部はかたくなに受け付けない。

これは検察が官僚機構にチャレンジする政治家をねらうのと似ている。岸信介は、CIAの工作員として受け取った巨額の報酬で自民党の政治家を買収して首相になり、数々の疑惑が噂されたが、摘発されなかった。佐藤栄作もCIAから金を受け取っていたが、造船疑獄では指揮権発動で救われた。他方、田中角栄や小沢一郎のように「政治主導」をねらう政治家は検察にやられる。いくら金と権力をもっていても、彼らのような党人派は「官治国家」日本では傍流なのだ。

この明治以来の国家資本主義が、日本の挫折の根本原因である。それは先進国に追いつく局面では、資本を戦略部門に集中して急速な成長を実現できるが、キャッチアップが終わってもやめることができない。それをコントロールする「外部」をもたないからだ。「国のかたちを変える」と所信表明でのべた鳩山元首相には問題意識だけはあったが、菅首相は「政治主導」を引っ込めてしまった。乗数効果のときのように官僚に意地悪されると、彼らに対抗する情報インフラをもっていない民主党は無力であることを知ったからだろう。

電波行政は、こうした国家資本主義の最後の砦である。他の分野では市場経済に譲歩した官僚機構も、電波だけは離そうとしない。それは電波がメディアをコントロールする武器だからである。「第四権力」などとおだてられても、霞ヶ関の恥部である電波利権に沈黙を守るテレビ・新聞は、しょせん権力の犬だ。彼らに「第一権力」霞ヶ関を牽制する機能は期待できない。これが日本の変われない原因である。