夏野流 脱ガラパゴスの思考法おととい著者にもらった本。彼は討論でも「利活用」にこだわっていたが、私もインフラよりそれを使う側の問題のほうが大きいと思う。先日の記事でも書いたように、日本のIT部門の生産性は必ずしも低くないが、それを使うサービス産業が情報革命に適応していない。その象徴がケータイである。

著者のつくったiモードがガラパゴス化の原因のようにいわれるが、周波数などの条件が内外で違う状況では、国内に最適化した商品が世界に売れないのは当たり前だ、と彼はアゴラで反論している。

総務省は「情報通信国際戦略局」をつくって南米に国産の地デジを売り込んだが、ブラジルで圧倒的に売れているのはサムスンのテレビである。総務省が日の丸技術PHSを育成するために、ドコモを排除して美人投票で当選させたウィルコムは倒産した。そのドコモのワンセグを使って総務省はクアルコムを排除しようとしているが、ワンセグはビジネスとして成り立たない。

問題は役所が「国際競争力の強化」や「国産技術の育成」の旗を振ることではないのだ。国内で競争できない業者が、世界で競争できるはずがない。遠回りに見えても、国内競争を促進することが国際競争に勝つ王道である。周波数のような絶対的なボトルネックで競争が阻害されていることは大きな問題だが、それを緩和するだけでは事態は改善しない。大事なのは外資の参入による「利活用」のグローバル化である。

この点で、にわかに超党派のコンセンサスができつつある法人税の引き下げはいいニュースだ。思い切ってシンガポール並みの10%ぐらいに下げれば、日本にアジアの資本が集まるだろう。カントリーリスクの大きい中国に比べれば、東京は安全で快適だ。日本人が苦手な英語を勉強して「国際化」するより、移民を自由化して東京を国際都市にするのが早道である。