乗数効果も知らない菅財務相が、外国特派員協会で第2のケインズ革命を提唱した。彼が本当にそんな革命的な新理論を発見したのだとすれば、日本人として初のノーベル経済学賞は確実だろう。しかし残念ながら、その内容はロイターによれば、次のような意味不明の話だ:
菅財務相は、日本経済の成長低迷とデフレ状況の原因は、過去の「土地を中心としたバブル(の発生)と崩壊が尾を引いている」と分析し、「第2のケインズ革命を起こすことで、この状況を打開できる」と指摘。
具体的には「お金を循環させることがポイント」と述べ、「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える。日本にあるお金を循環させることで、日本の回復は十分に可能だ」との見解を示した。
さらに、「場合によっては、増税をしても景気は悪くならず、逆に使い道を間違わなければ景気はよくなるということを部下に検証させている」と発言。しかし、「(政治家は)増税すると選挙に負けるというトラウマがある。この問題を選挙の争点として語る限りは(実現できない)」と述べ、国会などの議論を通じて与野党が認識を共有することが不可欠と強調した。
「お金を循環させることがポイント」というのは、彼が自称エコノミストから吹き込まれたリフレ論のことかもしれないが、経済学で教えるように貨幣は中立であり、いくらお金だけ循環しても景気はよくならない。問題は日銀がお金をばらまくことではなく、投資水準を高めて実体経済を改善することだ。
「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える」というのは日本語として理解不可能だが、彼の理解していない乗数効果のことをいおうとしているのかもしれない。しかし最近の実証研究では、乗数効果は1以下だ。つまり増税額以下の所得しか創出されないので、税収も増えない。
ただし「増税によって不況になるとは限らない」と理解すれば、菅氏の意見は間違っていない。以前の記事でも書いたように「橋本政権の消費税増税で景気が悪化した」というのは嘘であり、逆に緊縮財政をとった小泉内閣のもとで景気は回復した。増税によって財政危機が是正され、経済が長期的によくなる見通しが出てくると投資が回復するという非ケインズ効果が80年代以降、欧州でみられるようになってきた。
菅氏の本音は「増税を議論すると選挙に負ける」ということだろうが、これも心配はいらない。たとえば読売新聞の世論調査でも、61%が「消費税率の引き上げはやむを得ない」と答えている。それより財源の裏づけもないバラマキ福祉への批判のほうがはるかに強い。菅氏がノーベル賞をもらうことは期待できないが、増税を議論する必要があるという彼の結論は正しい。
「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える」というのは日本語として理解不可能だが、彼の理解していない乗数効果のことをいおうとしているのかもしれない。しかし最近の実証研究では、乗数効果は1以下だ。つまり増税額以下の所得しか創出されないので、税収も増えない。
ただし「増税によって不況になるとは限らない」と理解すれば、菅氏の意見は間違っていない。以前の記事でも書いたように「橋本政権の消費税増税で景気が悪化した」というのは嘘であり、逆に緊縮財政をとった小泉内閣のもとで景気は回復した。増税によって財政危機が是正され、経済が長期的によくなる見通しが出てくると投資が回復するという非ケインズ効果が80年代以降、欧州でみられるようになってきた。
菅氏の本音は「増税を議論すると選挙に負ける」ということだろうが、これも心配はいらない。たとえば読売新聞の世論調査でも、61%が「消費税率の引き上げはやむを得ない」と答えている。それより財源の裏づけもないバラマキ福祉への批判のほうがはるかに強い。菅氏がノーベル賞をもらうことは期待できないが、増税を議論する必要があるという彼の結論は正しい。