ゆうちょ銀行の預金受け入れ限度額が2000万円に引き上げられたことに関連して、その意図がさまざまな憶測を呼んでいるが、亀井静香郵政担当相は昨夜、国会決議によって国債を日本郵政に引き受けさせる規定を郵政改革法に盛り込むことを記者団に明かした。これは事実上の「国債の郵貯引き受け」といえ、さまざまな波紋を呼びそうだ。

現在、郵貯と簡保は合計300兆円の8割を国債で運用しており、国債のほぼ4割を保有する。これは日銀(50兆円程度)はもちろん、民間金融機関の合計も上回り、この資産運用を多様化してリスクを分散することが民営化の一つのねらいだった。しかし元大蔵次官の斉藤次郎氏を社長に迎え、郵貯は逆に「国債引き受け機関」の性格を強めている。

この背景には、政府債務が900兆円を超える見通しとなり、国内での消化が困難になってきたという事情があると考えられる。このままでは5年以内にも、外債の募集が必要となる事態が予想されるが、その場合には現在のような低金利で発行できるとは思われず、需給の不安定性も増す。そこで、このような事態を避けて国内だけで国債を消化するには、郵貯がさらに国債を引き受けるしかない。

かりに今回の限度額引き上げによって郵貯・簡保の資金量が50兆円増えれば、それだけで1年分の国債が消化でき、それで足りなければ3000万円、4000万円・・・と増やしていけばよいわけだ。亀井氏は「財政危機というのは財務官僚の作り出したフィクション。国家の徴税権という担保がある限り、債務不履行の心配はない。国債償還の原資が足りなくなったら増税すればいい」と説明した。

現在の長期金利からみると、国債の「札割れ」が起こるような状況はそうすぐに来るとは考えられないが、増税するためには税制調査会や国会審議などで数年かかかる。「国債の入札に緊急事態が生じた場合に、日本郵政の社長に命令して国債を引き受けさせる制度は危機管理として必要だ」と亀井氏は強調した。

「それは日本郵政を『第二日銀』にして国営化することになるのでは?」という記者団の質問に対して、亀井氏は「国営化して何が悪い。政府が日本の隅々まで責任をもって郵便も貯金もユニバーサルサービスする制度は、世界に冠たるものだ。郵政民営化なんて単なる小泉[純一郎元首相]の思い込みで、おれはもともと反対だった。民間が金を使わないんだから、国が使うしかないじゃないか。ガハハ」と豪快に笑って官邸をあとにした。