先日の「電波鎖国」についての記事が、ツイッターで孫正義氏にRTされ、700以上のRTがついた。電波の割り当ては、ケータイだけでなく、今後でてくるiPadなどのタブレット端末にも大きく影響する。特に総務省の「700/900MHz帯移動通信システム作業班」で割り当てが検討されている次世代携帯の帯域がどれだけ確保できるかが、今後10年の日本の通信産業の運命を決めるといってもよい。

この作業班で、クアルコムなど外資系メーカーは「このままでは日本は孤立する」と主張した。日本の周波数割り当てだけが欧州・アジアと異なるため、世界の大手ベンダーが日本用の通信チップをつくらず、日本ベンダーの端末も輸出できなくなるおそれがある。ただでさえ「ガラパゴス化」で競争力の落ちている日本企業にとっては、海部美知氏のいうように「棺桶の蓋に釘」となろう。

日本が他国と同じ帯域を使えないのは、テレビ局が月間に数十時間しか使っていないFPU周波数(770~806MHz)を離さないためだ。この帯域は他の国ではアップリンク用に使われており、ここを開放すれば日本も700MHz帯でアップリンク/ダウンリンクのペアができ、国際標準の端末が使える。しかしテレビ局が居座っているため、携帯用には40MHzしか取れず、このままでは700/900MHzのペアという世界のどこにもない割り当てになってしまう。

他方、ニューズウィークでも紹介したように、FCCは10年以内に500MHzの電波を開放するという全米ブロードバンド計画を発表した。これはブロードバンドの重点を、光ファイバーから高速無線に移すものだ。クリントン政権のFCC委員長だったリード・ハント氏は、この計画を次のように高く評価している:
これは放送が「コモン・メディア」だった時代が終わり、ブロードバンドがコモン・メディアになる時代の始まりだ。デジタル化にあたっては、テレビに過大に与えられている周波数を削減し、ブロードバンドに渡すべきだ。インターネットが広がったとき、FCCは電話会社を規制して彼らがインターネットを妨害するのをやめさせたが、今度はテレビ局の妨害をやめさせなければならない。FCCはデジタル放送のバウチャーを配ったが、本来は技術中立な「ブロードバンド・バウチャー」を配るべきだった。
幕府の時代が終わったように、ドメスティックなテレビの時代は終わった。これから始まるのは、携帯やタブレットによる国境を超えたクラウド・コンピューティングの時代であり、それに必要なのは人々を常時つなぐ無線ブロードバンドである。その帯域が500MHz確保されるアメリカと、40MHzの日本では、東名高速と自転車道で競走するようなものだ。

日本の周波数を開国することは、海外の最新サービスを利用可能にすると同時に、日本の製品やサービスが世界(特にアジア)に出て行くチャンスとなる。数百MHzの帯域が開放されれば、ベンチャー企業が参入して新しいサービスが生まれ、料金も大幅に下がることが期待できる。テレビも新聞もこの問題をまったく報じないが、ツイッターやブログから電波開国の動きが始まれば、日本の民主主義が変わるかもしれない。そうした動きを起こせる「坂本龍馬」は、孫氏だけだろう。