鳩山首相が「省庁再編」に言及した。具体的には「子ども家庭省」をつくって幼保一元化しようという話だが、これは麻生首相も言い出してすぐつぶされた。「情報通信省」の話も昔からあるが実現しない。「日本版FCC」も消えてしまった。今度の話も「政治資金の問題から目をそらすのがねらいだろう」などと冷ややかにみられている。

財投改革のとき、加藤寛氏にインタビューしたら「郵政民営化は絶対やるべきだが、霞ヶ関の改革は政治家の鬼門だ。行政改革をやった原敬も犬養毅も暗殺され、戦後も福田赳夫のように行革をやろうとした内閣は短命に終わった。私は命が惜しいから、霞ヶ関には手をつけない」と笑っていた。その後の橋本内閣の末路をみると、これは冗談ではすまない。

26d631ea.jpgただ今回は成功する可能性もあると思う。というのは、官僚機構が追い詰められているからだ。これは東大に掲示された経産省の採用説明会のポスターだが、最近は東大経済学部の就職説明会に数人しか来なくてリクルーターが愕然としたという。それは天下り禁止や官僚バッシングだけが原因ではなく、もう役所に仕事がないということに学生も気づいているからだろう。

経産省は2001年の省庁再編のとき発展途上国型のターゲティング政策を卒業し、「霞ヶ関全体のシンクタンク」というビジネスモデルに脱却するつもりだったが、北畑隆生氏などの「統制派」につぶされた。おかげで若手官僚の流出が止まらず、就職偏差値も下がる一方だ。

だから鳩山内閣が省庁再々編をやるなら、橋本内閣のように審議会でやる伝統的な手法ではなく、公務員制度改革と一体で、彼ら自身が変えるインセンティブを生み出す必要があろう。ノンキャリや労組はつねに改革反対だが、一定の年齢以下のキャリアには変えないと自分のリスクが大きいと思っている官僚が多い。今の「何でも屋」的なローテーションでは民間でつぶしがきかないので、役所で出世の見通しがなくなっても骨を埋めるしかない。これを改めて専門的技能を育成し、人材を流動化させることが重要である。

しかし公務員制度改革も鬼門だ。渡辺喜美氏と高橋洋一氏が公務員制度改革法案を出したときは、霞ヶ関は法律を政令で換骨奪胎するという裏技でつぶそうとし、「2009年中に天下りを廃止する」と約束した麻生政権は倒れ、公務員制度改革は宙に浮いてしまった。改革に抵抗する官僚が政治家を追い込む常套手段は、スキャンダルである。鳩山政権の苦境をみていると、犬養を殺した官僚の力は健在だなと思う。

追記:IEでは画像が表示されなかったようだが、当ブログではW3Cに完全準拠していないIEでの動作は保証しない。Chromeを使うことを強くおすすめする。