76f6fece.jpg明けましておめでとうございます。今年も年賀状は書かないので、ブログでごあいさつ。

昨年は「希望を捨てる勇気」も必要かもしれないと皮肉で書きましたが、ここ数ヶ月の民主党政権の迷走ぶりを見ていると、それは皮肉にはならないようです。このままでは、2010年代はゼロ成長が続く「衰退の10年」になるおそれが強い。

がむしゃらに利益を追求するのをやめて優雅に衰退しよう、というのは一つの考え方ですが、衰退する社会で生きるのは、成長する社会よりはるかにむずかしい。所得が増えないから、誰かに再分配するときは他の人の所得を減らす「ゼロサム・ゲーム」になり、政治的対立が起こります。特に今のように世代間の所得格差が大きい場合は、バラマキ福祉は貧しい若年労働者から豊かな中高年に再分配する逆進的な政策になりやすい。

今のところ、この対立は政府債務という形で先送りされていますが、いずれ大増税か大インフレは不可避です。増税は政治的に不可能なので(物価か資産価格の)インフレが起こるでしょう。それによって政府債務は維持可能になり、年金の実質価値が下がって世代間の所得格差も縮小します。もちろん国債を大量に保有している銀行は経営危機に陥り、年金生活者は困窮するので政治的な紛争が激化し、内閣がいくつも倒れるでしょう。しかし戦争とか革命とかいう破局的な事態に至ることは考えられない。

こう考えると、優雅に衰退することは不可能でも、落ちるところまで落ちれば、やり直せるような気がします。むしろそこまで落ちるのに何年かかるかが重要です。私の世代にとっては、あと20年ぐらい先送りできればハッピーですが、たぶんそうは行かないでしょう。あと10年、今のような状態が続いたら、日本経済の体力が消耗して立ち直れなくなるおそれが強い。「実質破綻先」は早めに破綻させたほうが痛みは少ないというのが、失われた20年の教訓です。