あらたにすというウェブサイトは何のためにあるのかよくわからないが、新聞社の論説委員の知能程度を比較するには便利だ。きょうの朝日新聞に「派遣法改正―労働者保護への方向転換」という社説が出ていたので、22日の日経新聞の「派遣労働者の保護に逆行する法改正だ」という社説と比較してみた。朝日はこう書く:
登録型派遣や日雇い派遣を禁止すると、企業が使いづらくなり、かえって失業が増えるという主張がある。製造業派遣を規制すると、海外に生産拠点を移す企業が増え、雇用が失われるという議論もある。しかし、だからといって、景気変動の一番のしわ寄せが非正社員にいく構造を放置したままでいいだろうか。
もちろんよくないが、その「構造」は派遣労働を禁止すればなくなるのだろうか。日経はこう書く:
このまま法改正が進めば派遣で働いている多くの人たちが、かえって困るだろう。原案は経営側の要望を受け禁止の例外扱いを増やしたが、昨年6月1日時点の派遣労働者202万人のうち、実際に派遣で働けなくなる人は44万人にのぼる計算だ。派遣を原則禁止にする一方で、派遣で働いていた人が職を失わずにすむ手立てを原案が示していない点は大きな問題だ。
朝日は、職を失う44万人をどうするのかという対策を示さないで、今回の規制だけでは不足だから、もっと徹底的に規制しろと主張する:
経営側の言い分も含め、通常国会でさらに議論を深めてもらいたい。[・・・]同じ仕事をすれば雇用形態にかかわらず同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」が、欧州では当たり前だ。すぐには導入できないにしても、実現に向けて努力していくべきだろう。非正社員の契約更新の回数や期間にも上限を設け、雇用の「調整弁」頼みの経営が必ずしも得にならないようにしていく。
問題を「経営側の言い分」などという階級闘争にすりかえるのは社会主義の抜けない老人の特徴だが、派遣労働の規制強化に反対しているのは当の派遣労働者である。「同一労働同一賃金」を、規制強化によって実現するよう求めているのも危険な方向だ。日経はこう書く:
企業に非正規社員から正社員への転換を強制はできない。「働きたいときに働く」ことを選ぶ人たちは多く、派遣という形態は働き方の多様化を支えている。この働き方そのものを否定すべきではない。雇用の伸びない産業から医療、情報分野など成長産業へ労働力を移すうえでも、労働市場の機能を生かした労働者派遣は有効な手段だ。
日経が特に「経営寄り」というわけではなく、これは八代尚宏氏なども説く、経済学のごく常識的な考え方だ。朝日の社説を学生が答案として出したら、どこの大学でも「不可」がつくだろう。朝日の経済部の記者は民主党の「官製派遣切り」を懸念しているが、そういう記事を出稿しても没になるようだ。整理部デスクや論説委員(労働問題は社会部出身者の担当だろう)にとっては、中高年の既得権をおかす雇用規制の緩和が恐いのだ。そうこうしているうちに朝日新聞が沈没して、彼らの年金もJALのようにパーになるだろう。