冗談で書いたデノミの記事に、磯崎さんからツイッターでくわしいコメントをもらったので、少しまじめにフォローしてみる。

おっしゃるように、もちろん「日銀電子マネー」は不可能である。技術的にはすでに実現しているが、それを日銀が発行することは、きわめて合理的であるがゆえに政治的には通らない。その本当のねらいは、金の流れを透明化することにあるからだ。納税者番号さえ提唱されてから20年以上も実現できず、郵貯の口座が5億6000万もある国で、金の流れを日銀が100%把握する改革は不可能である。

逆にいうと、電子マネーまで行かなくても、金の流れを少しでも透明化すれば、増税や事業仕分けよりはるかに効率的に税収を増やすことができる。国税庁の職員は人口10万人あたり43人と先進国でも最低レベルで、クロヨンと呼ばれるような捕捉率の不公平が続いてきた。消費税も当初はEUのようにインボイス方式でやる予定だったが、自民党が「零細企業の事務負担が大きい」という名目でつぶしたため、多額の「益税」が発生している。

だから早急に住基ネットのIDを納税者番号として、納税業務を全面的に電子化すべきだ。また徴税事務を民間委託して税務職員を増員し、税務調査を増やして捕捉率を上げる必要がある。これによって経費増以上の税収増が見込まれるので、行革にも反しない。日本の地下経済は約20兆円といわれるので、この半分でも捕捉すれば消費税5%分がまかなえる。

この種の改革が先進国でもっとも遅れていた最大の原因は、自民党の政治家というもっとも不透明な資金に依存する人々が政権を握っていたからだ。民主党が「開かれた政府」を党是とするなら、増税の前に金の流れを徹底的に透明化する改革が必要だ。これは財務省の省益にも沿うので、彼らにいえばすぐに詳細な資料を出してくるだろう。そのためには、まず首相が範を示さなければならないが・・・