きのう慶応のシンポジウムで「日本版FCC」の議論をしていて、中村伊知哉氏から10年前の橋本行革の話が出てきた。これは覚えている人も少ないだろうが、1997年に始まったころは大改革を行なう予定だった。行政改革会議では「発展途上国型の産業振興を、市場原理を中心に据えた経済運営に転換した行政を行う」という方針のもとに、通信放送の規制を独立行政委員会に分離して産業振興機能は「経済省」に集約するという中間報告が出された。
その後、紆余曲折をへてこの改革は自民党の郵政族につぶされ、2001年に1府22省庁を1府12省に集約して看板をかけかえただけの省庁再編が行なわれた。私はそのとき「独立行政法人」として出発した経済産業研究所に入ったのだが、これも経産省につぶされた。独立とは名ばかりで、人事も予算も「本省」に握られた研究所が、自由に研究できるはずもなかったのだ。
そのとき初代の研究部長だった松井孝治氏は、橋本行革で通産省から首相官邸に出向して行政改革会議の事務局をつとめたのだが、改革がつぶされたあと通産省を辞めて民主党の参議院議員になり、いま官房副長官として政権の中枢にいる。彼が起草した鳩山首相の所信表明演説には、こういう一節がある:
シンポジウムでも、日本版FCCについて出席者の意見が一致したのは、「目的の不明な組織いじりは意味がない」ということだった。国のかたちを変えるという観点からは、独立行政委員会よりもBPOや電気通信紛争処理委員会のような司法機能(ADR)を強化したほうがいい。むしろ通信放送分野をパイロットケースとして、公務員制度改革や司法との役割分担を含めた省庁の再々編を考えてもいいのではないか。
その後、紆余曲折をへてこの改革は自民党の郵政族につぶされ、2001年に1府22省庁を1府12省に集約して看板をかけかえただけの省庁再編が行なわれた。私はそのとき「独立行政法人」として出発した経済産業研究所に入ったのだが、これも経産省につぶされた。独立とは名ばかりで、人事も予算も「本省」に握られた研究所が、自由に研究できるはずもなかったのだ。
そのとき初代の研究部長だった松井孝治氏は、橋本行革で通産省から首相官邸に出向して行政改革会議の事務局をつとめたのだが、改革がつぶされたあと通産省を辞めて民主党の参議院議員になり、いま官房副長官として政権の中枢にいる。彼が起草した鳩山首相の所信表明演説には、こういう一節がある:
日本は、140年前、明治維新という一大変革を成し遂げた国であります。現在、鳩山内閣が取り組んでいることは、言わば、「無血の平成維新」です。今日の維新は、官僚依存から、国民への大政奉還であり、中央集権から地域・現場主権へ、島国から開かれた海洋国家への、国のかたちの変革の試みです。この認識には、私も賛成だ(大政奉還という表現はいただけないが)。岩倉使節団がプロイセンの制度を勉強したころには、エリート官僚が国民を指導する大陸型のシステムが適していたかもしれないが、経済が成熟すると、行政が立法も司法もかねる集権的構造では変化に対応できない。戦略的な意思決定は「政治主導」で行ない、行政はその執行に特化し、その監視は司法が行なう役割分担が必要だ。
シンポジウムでも、日本版FCCについて出席者の意見が一致したのは、「目的の不明な組織いじりは意味がない」ということだった。国のかたちを変えるという観点からは、独立行政委員会よりもBPOや電気通信紛争処理委員会のような司法機能(ADR)を強化したほうがいい。むしろ通信放送分野をパイロットケースとして、公務員制度改革や司法との役割分担を含めた省庁の再々編を考えてもいいのではないか。