政府が第2次補正予算の方針をまとめた。それによれば、
  • 雇用:雇用対策など国民の安心確保を目指す
  • 環境:成長戦略として地球温暖化対策を推進
  • 景気:金融対策等による景気下支えを図る
という方針だそうだが、景気対策である補正予算に「成長戦略」が混在しているのは混乱している。このようなバラマキによって「二番底」を防ぐという発想は、自民党政権と変わらないが、それが役に立たないことは理論的にも実証的にも明らかだ。たとえばJohn Taylorが景気対策について検証した結果では、ブッシュ政権(昨年3月)とオバマ政権(今年1月)の財政支出によって、次の図のように可処分所得(DPI)は上がったが、個人消費支出(PCE)は増えていない。


これは恒常所得仮説としてよく知られるもので、人々が計画的に消費するなら、一時的に所得が増えてもそれが消費にまわることはないので、景気刺激の効果はない。さらに公共投資の長期的効果についてTaylorたちがシミュレーションした結果によれば、乗数効果は1以下である。これは公共投資が民間投資をクラウディングアウトするためだ。

Barro-Redlickも、1940年代以降の財政政策についての包括的な実証研究にもとづいて、財政政策の乗数は一貫して1以下だったと結論している。財政も貨幣も長期的には中立なので、政府が税金をばらまいても、日銀がお札をばらまいても、実体経済への効果はキャンセルされてしまうのだ。「補正で景気の底割れを防ぐ」なんて、今どき兜町でも使われなくなった陳腐なストーリーで、納税者をあざむくことはできない。