最近はRSSリーダーとツイッターしか見なくなり、はてなブックマークもノイズを「非表示」にするとゴミが消えたので、全体状況はよくわからないが、5年遅れのリフレ論争は、まだ続いているようだ。特にきのう池尾さんにからんできた某ワーキングプアのつぶやきには、ちょっと考えさせらえた。
私、年収400万に満たないワープアです。そんなワープアにしてみれば、あなたや某氏みたいに豊かな生活している人がリフレ反対と言われても、金持ちが何言ってやがるとしか聞こえないです。もう、10年近く年収上がっていない。そんななかで勝間さんは救世主です。
まさに彼自身いうように、絵に描いたような「下流の貧乏人で低学歴なバカな人間のルサンチマン」である。彼はリフレの意味も知らないだろうが、そんなことはどうでもいい。それは「ワープアの救世主」が政府に提案した、彼らの不幸を一挙に解決する魔法なのだ。勝間氏のマーケティングは、貧困ビジネスとしては実に見事にターゲットを射ている。

ニーチェは、キリスト教をこのような貧困ビジネスとして批判した。それは奴隷や貧民のルサンチマンを宗教的な道徳にすり替え、現世で虐げられている彼らこそ最初に天国に入ると説くことによって偽の希望を売り歩き、彼らを現世の不幸に甘んじる羊の群れに変えたのだ。最後の著書『反キリスト者』で、ニーチェは次のように激しくキリスト教を攻撃した:
人々の不幸を取り除くことは、教会のもっとも深い利益に反することだった。というのは、教会は不幸を食い物にしてきたからである。それどころか、教会は不幸を創造してきた。自己を永遠ならしむるために。たとえば罪悪といった蛆虫である。[・・・]「神の前における魂の平等」、このごまかし、卑しい人々のルサンチマンをごまかすためのこの口実、ついには革命、近代的理念、そして社会の全秩序の衰亡原理となったこの概念の爆薬は、キリスト教のダイナマイトだ。
ニーチェはキリスト教の偽善を否定し、人々をニヒリズムに直面させてそれを超克する道を描こうとしたのだが、その試みは彼の発狂によって途絶し、「来るべき200年はニヒリズムの時代となるだろう」という予言だけが残った。そして彼の予言どおり、現代の日本ではニヒリズムが社会をおおっているが、そこには抑圧されたルサンチマンが潜んでいる。それが戦前のような形で爆発することは今のところ考えられないが、ニーチェの思想がナチに利用されたことは歴史的事実だ。

リフレ派もいうように、人為的インフレとは「通貨の信用を意図的に毀損する」ことであり、それも1930年代のドイツで起こったことだ。もしかすると彼らの主張には、そういう破局を望む破壊本能がひそんでいるのかもしれない。そしてこのまま財政赤字が累積してゆけば、好むと好まざるとにかかわらず、日本は「焼け跡」からやり直すしかなくなるだろう。