Friedman-Schwartzの古典(の第7章)が初めて訳された。本書はケインズのいう「総需要の低下によって通貨供給が減った」という因果関係を逆にして、FRBが通貨供給量を絞ったことが金融収縮をまねいて大恐慌をもたらしたことを定量的データによって証明したものだ。その後も本書については大論争があったが、
Bernankeも基本的にFriedman-Schwartzが正しかったと結論している。FRBに引き締めの意図はなかったが、当時は金本位制だったため、金の流出を避けるために金利を引き上げたことが通貨供給の減少をもたらし、他国に不況を輸出したのである。
だから金融危機に対応する決定的な条件は、流動性を十分供給して銀行の連鎖倒産と取り付けを避けることであり、財政支出にはほとんど意味がない。1963年に出た本書がもう少し読みやすく書かれ、マクロ経済学の教科書に取り入れられていれば、戦後の多くの金融危機はもっと軽微で、財政赤字は少なくてすんだかもしれない。経済学は大した学問ではないが、それを知らないことは大きな災難をもたらすのである。