テレビのワイドショーによく出てくる森永卓郎という「経済アナリスト」がいる。私はワイドショーは見ないのでよく知らないが、たまに当ブログに彼を批判するコメントやTBがくる。その元記事を読むと、なるほどこれはひどい。ワイドショーって、毎日こんないい加減な話を流しているのだろうか。

たとえば森永氏は、GMの破綻処理に時間がかかった原因をこう推測する:「それはCDSという支払保険がかなり設定されていたからだと考えられる。なぜなら、破綻しなくてはCDSの保険がおりないからだ」。彼はCDSのしくみも知らないらしい。CDSにはいろいろな特約があり、GMのように債務整理が行なわれる場合には、それも清算事由に該当する。GMの破綻処理が長期化した原因はそんなことではなく、債務削減交渉が難航したことだ。これ以外にも間違いが多いが、極めつけはその結論だ:
日本の[金融機関の]損失総額は15兆円とされ、これは全体の4%にも満たない。欧米にくらべると、たいして怪我をしていないのである。それにもかかわらず、経済がガタガタになってしまったのはどうしたことか。

その根本にあるのは、今になっても「構造改革でしか経済が成長しない」という新自由主義の亡霊にとらわれているからだ。一般的な経済学ならば、景気回復への処方箋は財政出動と金融緩和である。新自由主義を信奉する人たちは、そうした対策に対して、新しい時代に通用しない古いやり方だといって今でも強く非難している。
麻生内閣が4月に決定した補正予算はGDPの2.6%と、臨時支出としては世界最大であり、日銀の政策金利も0.1%で、これも世界最低水準だ。現在の政権に「新自由主義の亡霊」にとらわれている人なんて一人もいない。それどころか首相は「私は郵政民営化に反対だった」といい、「小さな政府という政策はとらない」と明言している。森永氏の主張とは逆に、彼のいう「一般的な経済学」にもとづくケインズ政策を最大限に発動してバラマキをやっているのに「経済がガタガタ」なのである。ところが森永氏は、赤字財政を次のように擁護する:
景気が回復して経済規模が順調に拡大していけば、赤字額は相対的に減少するのである。年収200万円の人が50万円を借金するのは大変だが、年収1000万円になれば50万円はたいした金額でなくなるのと同様の理屈である。
なるほど500兆円のGDPに対して14兆円は大変だが、GDPが2500兆円になれば大したことはないわけだ。計算上はおっしゃる通りだが、日本のGDPが5倍になるのはいつのことだろうか? 今のままプライマリー・バランスの赤字が拡大すると、その前に日本の財政が破綻することはご存じないのだろうか?