本書は「格差問題」を経済データから分析して対策をのべたもので、内容はNIRAの提言などとほとんど同じだ。というより普通に経済の実態をみていたら、こういう提言しかできないということだろう。特徴は、欧州の労働政策を手本にしていることだ。欧州は雇用規制の強い「失業大国」だったが、90年代前半に東欧からの移民の流入などによって失業が深刻化し、雇用政策の見直しを迫られた。その後も曲折があったが、現在のEUの方針は、次の3点に要約される:
日本の問題は、この程度の認識さえ共有されていないことだ。松本徹三氏も指摘するように、韓国でさえ経済危機を雇用の流動化で乗り越えようとしたのに、日本では雇用調整助成金で社内失業を奨励し、派遣労働の規制を強化するなど、労働市場の硬直性を強める政策ばかりだ。本書も指摘するように、このような正社員中心主義こそが日本の労働市場をゆがめ、大量の非正社員を生んできた元凶である。
いま日本の直面している危機の原因は、労働者を囲い込む擬似共同体として成立していた「会社」システムが崩壊したことだ。それに代わるコミュニティを再建することは容易ではないが、たぶん後戻りはできない。著者もいうように、かつて欧州が雇用危機を受け止めて改革に乗り出したように、日本にとって現在の危機は改革の好機である。場当たり的な「雇用対策」や景気対策も一段落し、永田町にも「バラマキ疲れ」が出ているそうだから、そろそろ中長期の労働市場政策を考えてはどうだろうか。30日のシンポジウムでも、この問題を考えたい。
- 多様な就業形態と均等待遇
- フレクシキュリティ
- 政労使の合意による改革
日本の問題は、この程度の認識さえ共有されていないことだ。松本徹三氏も指摘するように、韓国でさえ経済危機を雇用の流動化で乗り越えようとしたのに、日本では雇用調整助成金で社内失業を奨励し、派遣労働の規制を強化するなど、労働市場の硬直性を強める政策ばかりだ。本書も指摘するように、このような正社員中心主義こそが日本の労働市場をゆがめ、大量の非正社員を生んできた元凶である。
いま日本の直面している危機の原因は、労働者を囲い込む擬似共同体として成立していた「会社」システムが崩壊したことだ。それに代わるコミュニティを再建することは容易ではないが、たぶん後戻りはできない。著者もいうように、かつて欧州が雇用危機を受け止めて改革に乗り出したように、日本にとって現在の危機は改革の好機である。場当たり的な「雇用対策」や景気対策も一段落し、永田町にも「バラマキ疲れ」が出ているそうだから、そろそろ中長期の労働市場政策を考えてはどうだろうか。30日のシンポジウムでも、この問題を考えたい。