不況の第2段階になると雇用不安が話題になるのはいつものことだが、今回は日本的雇用慣行の見直しが課題になっている。いま書いている本でも雇用が主要なテーマの一つなので、この機会に「雇用」と名のつく最近の本を片っ端から読んでみた。結論からいうと、参考になる本はきわめて少ない。★5つを満点として採点してみた(読んではいけない本にはリンクを張ってない):
  1. 労働市場制度改革:★★★★ 経済産業研究所の研究報告。バランスのとれた専門的なサーベイだが、ほとんどの読者には編者の論文で足りるだろう。
  2. 日本的雇用システム:★★★ これも専門的な論文集。歴史的な解説はくわしいが、理論的な分析はほとんどない。
  3. たった1%の賃下げが99%を幸せにする:★★★
  4. 「雇用断層」の研究:★★★ データを一通り見るには便利だが、分析や提言が弱い。
  5. 反貧困―「すべり台社会」からの脱出:★★★
  6. 雇用はなぜ壊れたのか(ちくま新書):★★ 法学の話と経済学の話がごちゃごちゃに並んでいて、何がいいたいのかわからない。
  7. 大失業時代(祥伝社新書):★★ 統計データを並べただけ。
  8. 雇用崩壊(アスキー新書):★ これもいろいろな人の意見を雑然と並べただけ。
  9. 雇用大崩壊(生活人新書):★ 雇用についての分析もデータもないリフレ派の宣伝。
  10. 労働再規制(ちくま新書):★ 最悪のひとこと。
1冊だけ読むとすれば、ここにあげた最近の本より『日本的雇用慣行の経済学』をおすすめする。1997年の本だが、経済学の標準的なフレームワークで「日本的」とされる雇用慣行の制度分析を行なっている。