小林慶一郎氏の「日本が不況から脱却した原因は輸出の拡大ではなく不良債権の処理だ」という批判に対して、クルーグマンが「そういう証拠はあるの?」と反論している。全体として小林氏の論旨は正しいと思うが、クルーグマンが当惑しているように「不良債権問題を軽視している」という批判は正しくない。

最大の問題は、2003年以降の景気回復は何によるものかということだ。これは先日の記事でも書いたように、非常にむずかしい問題だ。DSGEのフレームワークでは不良債権という問題は存在しえないので、銀行のバランスシートが成長率に影響を及ぼすことは考えられない。しかし現実にはそういうことが起こったので、現実と理論が食い違う場合には現実のほうが正しい。たとえば日銀の貸出態度DIをみると、図のように明らかに2003年から融資が拡大している。

この原因は、不良債権処理の進展によって銀行の貸出余力ができ、企業の過剰債務が解消されて新規投資が出てきたことだろう。他方、財政支出との相関はまったくない。輸出との相関は見られるが、これはゼロ金利や為替の円安介入が大きかったのではないか。この点で金融緩和は一定の効果があったといえよう。他方、CPIはずっとマイナスのままだったので、「デフレを止めないと景気は回復しない」という主張は反証された。