Mankiw's blogによれば、Macroeconomicsの第7版が9月に出る。今回のバージョンは、金融危機を取り入れただけでなく、動学モデルを入れたことが目玉だ。その部分のゲラも提供されている。DSGEそのものではなく、Goodfriendのような簡略版だが、初めて動学マクロが学部の教科書に入った意味は大きい。池尾・池田本では「DSGEなどの動学モデルが経済学の常識なのに、日本の官僚も自称エコノミストも大昔のどマクロ経済学しか知らない」と嘆いたが、ようやくそのギャップを埋める教科書が出てきたわけだ。

動学モデルで重要なのは、現実のGDPと均衡水準(natural level of output)を区別することだ。両者の乖離がGDPギャップで、これを縮めるのがマクロ政策の機能だが、均衡水準そのものが下方屈折した場合はこれをマクロ政策で引き上げることはできない。したがって、この均衡水準(潜在GDP)を見きわめることが重要だ。「真水で10兆円の財政出動でGDPギャップを埋める」という史上最大のバラマキ財政政策を発表した与謝野財務相には、ぜひこのゲラだけでも読んでいただきたい。