来週の週刊ダイヤモンドの特集は、現在の不況についての経済学者の見方を多面的に紹介している。「リフレ派」や「市場原理主義批判」は姿を消し、ケインズ派と主流派の論争が軸になっている(私も読書案内を書いた)。これは国際的な標準に近い。
印象的なのは、もっともケインズ派に近い吉川洋氏でさえ「需給ギャップを埋める」という伝統的なケインズ政策を否定して「持続的な成長」を説いている点だ。土居丈朗氏も「乗数効果は1未満」だとし、野口悠紀雄氏も北村伸行氏も「産業構造の転換が必要だ」という。福田慎一氏は長期国債を買うなどの非伝統的な金融政策も必要だとするが、政府紙幣や無利子国債などの「奇策」については肯定的な意見はゼロ。
雇用問題についても、川口大司氏は「規制強化は逆効果」と厚労省の政策を批判し、年金問題について鈴木亘氏は「巨大な世代間不公平が本質的な問題」とする。「北欧モデル」が検討に値するという点で、八代尚宏氏と神野直彦氏の意見は一致している。
ただし69ページの政策論争のチャートが間違っている。編集部は「ケインジアン対マネタリスト」みたいな図を描いているが、そんな論争は30年前に終わったのだ。正しい図を描いておこう。
「長期の財政政策」というのは法人税の減税や投資減税、「長期の金融政策」というのは主として金融システム対策で、右側は基本的には裁量的な介入には反対の経済学者(主流派)。左上が伝統的なケインズ政策だが、政権に入っている経済学者を除くとKrugmanぐらいだ。左下が非伝統的な金融政策だが、これもFRBやIMFの関係者が多い。
総じて主流の経済学者は制度設計に重点を置き、マクロ政策の効果には否定的だ。裁量的な政策を支持するのは政治的な立場を背負った経済学者が多く、「何かやらないと政治的にまずい」という政権からの要請が影響しているものと思われる。オバマ政権の巨額の財政政策には批判的な意見のほうが多く、FRBの非伝統的政策についても効果は限定的だという意見が多い。「ケインズが復活した」という表現は政治的には正しいが、学問的には正しくない。この30年間に経済学は進歩し、政府の裁量的な介入は有害無益だというコンセンサスが世界的に成立しているのだ。
印象的なのは、もっともケインズ派に近い吉川洋氏でさえ「需給ギャップを埋める」という伝統的なケインズ政策を否定して「持続的な成長」を説いている点だ。土居丈朗氏も「乗数効果は1未満」だとし、野口悠紀雄氏も北村伸行氏も「産業構造の転換が必要だ」という。福田慎一氏は長期国債を買うなどの非伝統的な金融政策も必要だとするが、政府紙幣や無利子国債などの「奇策」については肯定的な意見はゼロ。
雇用問題についても、川口大司氏は「規制強化は逆効果」と厚労省の政策を批判し、年金問題について鈴木亘氏は「巨大な世代間不公平が本質的な問題」とする。「北欧モデル」が検討に値するという点で、八代尚宏氏と神野直彦氏の意見は一致している。
ただし69ページの政策論争のチャートが間違っている。編集部は「ケインジアン対マネタリスト」みたいな図を描いているが、そんな論争は30年前に終わったのだ。正しい図を描いておこう。
「長期の財政政策」というのは法人税の減税や投資減税、「長期の金融政策」というのは主として金融システム対策で、右側は基本的には裁量的な介入には反対の経済学者(主流派)。左上が伝統的なケインズ政策だが、政権に入っている経済学者を除くとKrugmanぐらいだ。左下が非伝統的な金融政策だが、これもFRBやIMFの関係者が多い。
総じて主流の経済学者は制度設計に重点を置き、マクロ政策の効果には否定的だ。裁量的な政策を支持するのは政治的な立場を背負った経済学者が多く、「何かやらないと政治的にまずい」という政権からの要請が影響しているものと思われる。オバマ政権の巨額の財政政策には批判的な意見のほうが多く、FRBの非伝統的政策についても効果は限定的だという意見が多い。「ケインズが復活した」という表現は政治的には正しいが、学問的には正しくない。この30年間に経済学は進歩し、政府の裁量的な介入は有害無益だというコンセンサスが世界的に成立しているのだ。