民放連の広瀬道貞会長は、先週の定例会見で「260万世帯にデジタルテレビを支給せよ」という提案を発表した。「20型前後の薄型テレビは約7万円。アンテナの据え付け費を加え一世帯当たり10万円、合計でおよそ2600億円」だそうだ。ITproによれば、彼はこうのべたという:
政府の中で不況対策として地上放送のデジタル化問題を活用しようという声が徐々に出ている。我々も悪乗りするわけではないが,デジタル化問題が経済活性化に役立つならば,これを100%景気浮揚に活用すべき。
広瀬氏も気が引けているように、ドタバタでつくられる補正予算に悪乗りするのは、業界団体がバラマキ補助金を引き出すときの常套手段だ。このように露骨なロビー活動を繰り広げるテレビ朝日が、どの面下げて小沢一郎氏の政治献金を批判できるのか。かつて『補助金と政権党』という名著で「補助金は、財政を悪化させ、国民の税負担を重くするばかりでなく、民主政治の根っ子を侵食しつつある」と指摘した大ジャーナリストが、補助金あさりをする姿は見るに耐えない。

しかしすでに自民党と総務省の間で、追加補正に地デジ関連のバラマキを入れる方向で話が進んでいる。広瀬氏は、自民党には「5000万世帯に2万円のクーポン券を配布する1兆円規模の支援策」を要望している。このような巨額の補助金を特定の電機メーカーに支給することは、不正な利益供与である。デジタル配信のインフラは地デジだけではないのだから、やるなら技術中立的な方法にすべきだ。

たとえば10万円相当のブロードバンド・バウチャーを配り、それで地デジを買ってもよいし、光ファイバーやCATVやCS受信機を買ってもよい。こうすれば消費者はもっともコスト効果の高いインフラを選ぶことができ、競争が起こる。その財源は、アメリカと同様に周波数オークションで調達すれば、1兆円をはるかに超える国庫収入が上がるだろう。