
AIGの巨額ボーナス問題にはオバマ大統領もサマーズNEC委員長も最大限の怒りを表明し、ガイトナー財務長官は、ボーナスの返還が追加支援300億ドルの条件になると表明した。これは危険な政策だ。もし返還されず、政府がAIGの破綻に何の対策もとらないと、それによるアメリカ経済の損失はボーナスの数万倍にものぼるだろう。
アメリカのような契約社会で、AIGを救済するときボーナスについての条件を入れなかったのは米政府の手落ちだ。Economist誌も指摘するように、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドの事件で、CEOの受け取った70万ポンドの退職金を英政府が取り返せなかった前例があるのだから。
Mankiwもいうように、1.65億ドルというのは投入される公的資金の0.5%、GDPの0.001%にすぎない。幹部には自発的に返還を求めることにして、金融システム対策はこの問題と無関係に進めるしかない。勧善懲悪の感情が危機管理の大きな障害になる、というのも日本の「失われた10年」の貴重な教訓である。